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マリージョアという海軍がたくさん居る適地に単身で赴くかと思われたローは何故かリーシャに海軍の制服を着ろと言ってきた。
よく分からないままに懐かしい服に腕を通して鏡を眺めると、やはりどこか負けているような海軍の帽子のキャップ部分にあるマリーンという文字。
名前負けしているのが否めなくて苦笑しているとローがやってきて行くぞ、という。
先程船の窓から見えたが、結構大人数の海兵が居た。
その場所に行くというのか。
緊張しながらローに手を引かれる。
最後には腰を抱かれて大丈夫だ、と柔らかな笑みが見えた。
全く心情は穏やかではない。
そう言いたいが緊張に口の中が砂漠のように干上がっていて、上手く声を出せない。
なので、部屋に出戻った。
ただでさえ人見知りで小心者なのに、あんなに大勢の出迎えなんて吐きそうだ。
ロー達は何やら甲板でごそごそと何かを運んでいた。
ローは決して見せてくれない様でこちらからも全く見えない。
そして、彼らが箱を開けて数秒の後に海軍の男性達から叫び声が聞こえた。
一体何を渡したのだろうか。
怖くて聞けない。
ローは後々嫌でも聞く羽目になると言っていたので覚悟をしといた方が良さそうだ。

(深呼吸、深呼吸しなきゃ……!)

例えローと離れる事になってもそれは海兵という役職ならば当然なのだ。
シャチ達も恐らくローが何をするのかは聞いていると思う。
自分に教えてくれないのは、どうしてかよく分からないが。
こういう時は友人のランが居て欲しいと切に思う。
けれど、そうはならないのが現実。
溜息を吐きながら制服を眺めているとコンコン、と扉が叩かれた。

「入るぞー……おお!似合ってんじゃねェか」

シャチが入ってきた。

「あの、これ、仕事服で毎日着てたのですが……」

確かに着るのも久しいので気持ちは分かるがとても複雑だ。
海賊船でこの服を着ているのも複雑を極めているが。
苦笑して提言するとシャチはそうだったなー、と言う。
何をしにきたのかを聞くと、リーシャが海軍へ行くのはまだ無理なのだと言う話しだった。

「船長が突然来て海軍もてんやわんやらしいぞ。落ち着くまで時間が掛かりそうだと。つーわけで何か食ってけ。緊張して朝はあんまり食べてなかっただろ?」

「良く知ってますね。でも、緊張してるのは今も変わらなくて……」

今も食欲が湧かないのだと言うとシャチは俺だって同じ気持ちだと笑う。
結構疑わしい。
同じ気持ちならば彼は笑えないであろう。
とても笑っている余裕等ない。
げっそりしそうな頬を感じて再び溜息を吐く。
あまり気が乗らない状態でシャチに手を引かれるまま廊下を進み、食堂へ向かった。
そして、コックのハンクにガハガハと笑われて、頑張れと肩を叩かれてご飯を食べた。
デザートは何だかいつもよりも豪華に見える。
カボチャパイとフルーツのゼリー。
やはりいつもと少し違う。
これは何かの暗示なのだろうかと勘ぐってしまうのは疲れているからなのか。




数時間が経過し夕日が出始めた頃、ローが帰ってきた。
良かった、と安堵する。
そのままインペルダウンへ行ってしまうのかと不安だった。
顔に出ていたのだろう、彼はこちらへ来ると頭を撫でてくる。
何故こういう時は無駄に子ども扱いなのか、甚だ疑問だ。
良い笑顔で皆に報告し始めたローはリーシャの耳を耳栓で塞ぎ出した。
突然の奇行にショックを受ける。
確かに自分は部外者で敵であろう海軍だし、隠し事があってもなんら不思議はない。
でも、こんな風にあからさまな省きと仲間外れは、心のダメージが凄まじくなる。
今、自分は涙を流しても不思議ではないと思う。
そうしないのは今日でお別れになるからだ。
最後まで泣いていたなんて印象で去りたくない。
しかめっ面になるくらいの域で泣くのを我慢していると話しが終わったのか皆はホクホク顔で盛り上がっている。
羨ましい。
置いてけぼりの感覚にしんみりして居るとローに手を引かれる。

(?……どこに行くんだろう?)

明らかに自分の部屋ではない方向だ。
引かれるままに進んで行くとローの部屋に行き着く。
戸惑いながら入るとローは立っておけ、と指示して机の中を漁る。

(何をして……!)

「ロープ!?」

「大丈夫だ」

「何がでしょうかっ」

逃げようと回れ右をした時、ローの手が肩に触れる。
そのまま強めに押されてベッドへと倒れ込む。
恐々と目を開けて現状を確認すると目の前に恐怖の対象が縄を持って体を抑えつけていた。

「気を楽にしろ、すぐに終わる」


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