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ローに今朝の態度の始まりを説明する事を決めて、開くつもりのなかった口を開く。
「朝、トラファルガーさんを起こそうとした時に……キ、キスを、してきました」
「……………………」
「あのぉ、トラファルガーさん?」
黙りこくるローに心配になる。
「…………………………ちょっと頭を整理してるところだ」
呆然としている顔を浮かべるロー。
余程ショックを受けた様子でボーッとしているのを見て心配になる。
平気なのだろうか、と思い顔を見下げていると彼はスクッと立ち上がった。
「整理出来た」
「は、はあ」
息を吐くような相槌を打つ。
「俺はお前に寝ぼけてキスしたって事か」
頷くとローは手を頭に当てて溜め息をつく。
「で、お前は動揺して俺を避けたんだな」
「は、はい。そうです」
「俺を、嫌いになったわけではない……のか」
「き、嫌い?……何の事でしょう……?」
「いや、いい。今のは忘れろ」
頭痛を感じた様に目尻を下げる男に心配になる。
忘れろ、と言われた言葉を脳内で反響させた。
(嫌いになった……?もしかして、私がトラファルガーさんを?)
ローは大きな勘違いをしていた。
リーシャが嫌ったから慈悲をくれと言ったのだろうか。
そう思うと、少しだけ相手が可愛く見えた。
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