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ローの言葉を聞かされてシーンとした空間が何秒経過したのだろうか。

「最後にキスをして欲しい」

「え!ええ……っ、さ、最後?」

キスよりも最後と言う単語に脳内がハテナマークを占める。
何が最後なのだろうか。

「何が最後なのですか……?」

「俺はお前が好きだ。だが、お前には無理矢理攫って来たという経緯がある。何の確認もせずにここに連れて来たのもな。だから、この先はお前を自由にしようと思っている……だから、俺に最後の……慈悲を与えてくれ」

自由や慈悲の意味が分からなかったが、悲しげに目を伏せるローに胸がキリリと痛む。
何でこんなにも辛そうな顔をするのか。
慈悲という言葉にキスをして欲しいと言う事を理解した。
目を閉じている彼の睫毛を見つめる。

「トラファルガーさん」

膝を曲げてリーシャの視線より下に居るローの顔にソッと身を屈めて彼の鼻先に近付ける。
目の前には端正な顔付きがあって赤面してしまう。
最後の慈悲と言われ、叶えてあげたいと思った故の行動で。
この次に起こさなければいけない、キスをするという初の行為にドキドキとなる。
ジリジリと顔を近付けて彼の頬に手を添えた。

(唇……)

分厚くて色の良い唇と自分のものを近付ける。
目を閉じて、そこへ一思いにぶつけた。
もう、勢いに任せるしかない。

「っ−−−」

それは二秒か五秒の出来事。
ゆっくりと離した後は、瞼を上げる。

「どうしていきなり俺を避けたのか聞かせてくれ」

「あ、」

そういえば、まだそれを言っていなかった。
キスの余韻が覚めない内に、現実に引き戻されモジモジする。
説明しなくてはいけない。
そう思い、ローの目を真っ直ぐと見据えた。


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