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ペンギンにアドバイスを貰い、今リーシャはローの部屋の前に居た。
もし、誤解を解きたかったり、言いたい事があるならば何も言わないよりも言った方がいい、と言われ迷った結果、行くことにしたのだが。
(どうしよう、開けにくい)
何故か扉の隙間から威圧感のようなオーラが放たれていて、冷や汗が出る。
もしかして、今朝の事で怒っているのだろうか。
最悪な結末を想像して、顔が恐怖で引きつる。
出直した方が良さそうだ、と扉に背を向けかける瞬間に扉がギィ、と音を立てた。
反射的に振り返るとローが立っているのが視界に写り、彼に入れと短く言われる。
いつものニヤニヤとした笑みは皆無。
それは、異常な事だと理解するには十分であった。
恐る恐る部屋に入りベッドがある手前まで進むと扉の閉まる音が聞こえ、後ろを向いた状態で心の準備をしていると、不意に衝撃が背中に当たる。
自身のお腹付近を見下げると腕が回っており、肩には頭の重みを感じる。
後ろを向いても黒い髪の色しか見えなかったが、抱きしめられている事を知った。
「え、ト、トラファルガーさんっ!?」
その事をしっかり理解してしまえば、慌てるしかないわけで。
混乱しながらも、ローに呼び掛けても彼は答えずに腕の力を強めるだけ。
身を捩っても逃げられない。
あたふたとしても全く動く気配のない男に心臓が煩くなるのを実感していた。
その時間が数分続いた後に、何の前触れもなくごそごそと頭が動く。
「トラファルガーさん……?」
不安を抱きながら恐る恐る呼ぶ。
「好きだ」
「……あ、あの」
突然、毎回普通に言われている言葉を紡がれて瞬きをする。
何と言えば良いのか分からなくて困惑。
「これは俺の片思いだと自覚してる。だから、お前が俺の事を嫌いでも構わなかった」
(突然、何を……あ、もしかして)
今朝の態度が原因なのだと直感する。
しかし、独白で告白された内容にローの心が初めて晒され初耳となった。
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