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海賊が愛を語らった事により話題性が高くなり、そのお相手は誰ですか!?と司会者が余計な質問をする。
「身分の差ってやつで名前は明かせない」
「なんという事でしょうか、身分の差とは俄然燃える恋ですねェ!」
司会者の盛り上げ方が会場をヒートアップさせる。
そして最悪な展開を迎えた。
「トラファルガー・ローを引っ捕らえろ!」
「何故こんな所に!?」
海兵達が慌てて会場のステージへと集まるのが見えてこれは大変だと焦る。
そうして、あわあわとなりながらオロオロと辺りを見回していると後ろから腕を掴まれた。
ビクッとして後ろを向けば驚いた表情の海兵が居て名前を確かめられる。
そうです、と答える前に乱暴に手を引かれ転びそうになる。
こんなに人が居る場所で無茶苦茶に引っ張られては痛い。
肩や顔にぶつかる痛みに待って下さい、と言うのに海兵は連れ出すことだけを優先して目先の事にしか意識が行っていないようだ。
(このままじゃ私の体が保たない)
その痛みに涙が出そうになった時、海兵が後ろから蹴られた。
「ペンギンさん!」
「もう少しで連れて行かれるとこだった。船長にどやされる……一ヶ所に集まるから行こう」
強制的ではないのに、今は海兵が怖く思うリーシャは素直に従う。
同じ同業者に売られそうになり暴行されたあの恐怖は今もトラウマなのだ。
連れていかれてまた怖い目に合う事を考えればペンギンに手を引かれている自分がとても安心している事に納得する。
ステージの中央を見遣るとローが海兵達を足蹴にしているのが見えた。
「俺の邪魔すんじゃねェ!何人足りともこの愛を裂けられると思うなよ」
その発言で会場の熱気と歓声は最高潮に達した。
「うおー!かっけー!」
「素敵〜!」
「あんたに惚れるよ!」
人々の好感を上げ、彼は海兵を締め上げつつも軽く手を挙げた。
(変態さんなのに、好かれてる……)
言っている事は歯が浮きそうなことばかりなのに、ここの住人は余程物好きが多いようだ。
リーシャは恐々と周りの空気に竦み上がり、ただ唖然と上を見ているしかなかった。
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