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「あの、バンダナさんのお名前は知りませんでしたが、何度か貴方を見掛けたことがあります」
「ほんと?知ってくれてたなんて嬉しいねー。船長の女に」
「せ、お!?……ち、違います、違いますから!私はトラファルガーさんの、」
「あはは、何この子、凄いからかい安い」
「おいおい、あんま苛めると船長に怒られるぜ?」
その隣にいるシャチが咎めると、バンダナははいはい、と適当に流してボックスからメイク道具を取り出した。
色々な種類があって思わず感嘆の声がもれる。
バンダナはリーシャの頬に色の付いたアイシャドー等を寄せるとああでもない、これでもない、これはどうかな、と吟味して数十分後には仕上げに入っていた。
「うん、完成」
それを合図に待機していたシャチはこちらに来て「おお」と声を出す。
かくいうリーシャも、声を出せずにいた。
「あの、これ、本当に、わ、私なのでしょうか……?」
「ふふふ、そうだよ、鏡に写ってる美人な女性はリーシャちゃんに間違いないね、な、シャチ」
「そうだぜリーシャ。どこをどう見てもお前だ。つーかすげェ……化粧って凄ェな」
そう、まるでこれは、
「魔法みたい、です……」
キラキラとしたエフェクトが周りを飛んでいる幻覚が今にも見えそうな程、ビフォーアフターの変身した姿にただただ鏡を見詰めて顔をそっと触る。
紛れもない肌の感触と、鏡に写る同じ行動で自分と目の前にいる、化粧をした女性が同一人物だと証明した。
(これが、私……)
バンダナが化粧を得意とする、というシャチの言葉が現実味を帯びて胸に反響する。
「あ、そろそろ船長のとこにいかなきゃな」
「やべ、時間が結構かかったな……つーかよ、リーシャをこのまま船長のとこに行かせるのも味気なくね?」
「え?味気?」
シャチが閃いたとばかりにポン、と手を打った。
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