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いつもの変態言動からはかけ離れた雰囲気で、とても声をかけられる空気ではなかった。

「降りる準備は出来たか」

「ひゃい!…………トト、トラファルガーさん……お見苦しい声をごめんなさい……」

唐突に、考えていた本人に声をかけられたものだから歳ながらに変な声を出してしまい申し訳なくる。
恥ずかしくて謝るとローは笑いつつも可愛かったと言いのけてくるので更に何も言えなくなった。
服の端を握り赤くなった顔を隠して自室へと引っ込む。

「この歳になって可愛いって……少し複雑かも……はああ」

ため息を溢し、嬉しくも照れ臭いこの気持ちを数分かけて落ち着かせてから今日着る服をクローゼットから探し、悩みを繰り返して決めた。
せっかく買ってもらった服を着ないまま肥やしにするのはとても良心が痛むので最近入った新しいワンピースを着る。
可笑しくないかと鏡に写る自身を見てハッとした。

「私……化粧っけ……全然ない……」

鬱々とすると、スッと顔に手の平を当てる。
ランも化粧はしていなかったが、必用がない程綺麗な友人だ。
彼女に比べて自分は……と気落ち。

「リーシャ〜、もうすぐ着くぞー」

シャチが扉越しに伝えてきて、リーシャは脳裏に過った事を反射的にやる。
バッと扉に向かい思い切り扉を開くと驚いたシャチが目を白黒させてこちらを見ていた。
どうした!?という驚愕に満ちた言葉は今のリーシャには届かない。

「シャチさん!」

「へ、うへェ!?」

グイグイと詰め寄り意を決して聞く。

「化粧って、出来ますかっ」

「け!?……で、出来ねェこともないけど……てか、化粧品とかなら俺よりもバンダナの方が知ってるぜ……?」

てかどうしたんだよいきなり、と言っているシャチの出した名前に首を傾げる。

「バンダナ……さん?」

「つーか、まじその前にお前の心境に何の変化があったのか説明をして欲しいんだけどなァ……」

「心境の変化?……えっと…………え?」

戸惑うシャチがよく分からなくてこちらが戸惑うと頭の後ろに手をやって彼がいきなり化粧なんて言い出したから、と指摘してくるので、そこでやっと事の唐突さに気が付く。


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