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そして、ラン達はキッド海賊団の船へ行き、甲板に姿を見せたまま手を振ってきたのでこちらも振り返す。
「元気でいるのよー!」
「うん!ランちゃんもねえー!!」
叫んで別れを惜しめば自然と涙が浮かび目尻を擦る。
そうしていると後ろからポン、と背中に衝撃があり振り返るとローが目を細めてこちらを見ていた。
睫毛が憂いを帯びていてドキリとして涙も引っ込んだ。
そっと身体をローが正面に向かせるように移動すると自然にリーシャを抱き締める。
本当にあまりに自然とやったのでされるがままに胸の中へ誘導され顔が暖かな体温に包まれ背中にも腕の感覚で覆われた。
(え?)
「俺が傍にいてやるから……泣くな」
悲しそうな声音が耳に浸透していく。
惚けていると首筋に吐息を感じハッとなる。
顔から湯気が出そうな程熱くなり離れようとするが全く相手は動かなくて、テコでも動かなそうで、体力不足により腕にはもう力が入らなくなってしまう。
息が上がりぐったりとなり、また頭を預けてしまう形になる。
「必ず守る」
もう海の小波の音だけしか聞こえなかった。
ラン達と別れて数日後、リーシャ達はいつもの日常を過ごしていた。
「にーっしてもっ、あの女がマジでお前と入れ替わった時の顔……ばっくしょー!だったなァ!」
あの惨劇(?)の朝の出来事を酒のつまみに語るシャチの爆笑が響き渡る。
ランが居なくなって重い荷がなくなったのか大盤振る舞いな男に苦笑しながらローの隣で晩のご飯を食べていた。
今日はマグロの叩きで新鮮味があって美味だ。
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