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それからハートの海賊団はいつもより違う朝食を取り、ランは一旦キッドに混乱を防ぐ為にもこのことを伝えに行こうと甲板へ向かう。
そこにはローや船員達が釣りをしていたり寝ていたりして賑やかな光景に驚く。
確かにキッド海賊団と比べれば陽気な雰囲気を多目に醸し出している。
ローも白い生物の身体に寄りかかり目を閉じていた。
「どこへ行くんだ」
「キッドのとこ」
「その身体に傷付けんじゃねェぞ」
「あんたが言わないでくれる?」
そもそも入れ替えるなどイカれた所業をしなければこんな騒ぎにもならなかったと目を細めじとりと見る。
「フフフ、リーシャの顔で蔑んでも無駄だ」
「っ、このお……変態!」
ニヤリと笑うローにカチンときてその長身な身体に乗り上げ襟を掴む。
「!……っ、っ!」
「な、なに!え」
突然ローの目が動揺したかの様に揺れ、次は小刻みに身体が震えだし何事かと周りに助けを求めると船員が近寄ってきてあからさまにヤバッという顔をする。
その途端下から絞り出すような、何かを耐えるかのような声が聞こえた。
「くそっ…………んなこと……!」
「はぁ?」
「やべェ皆!船長が!…………………………ギリギリ鼻血出すのを堪えてるぞ!!」
船員が一人叫べば全員にどよめきが広がり、今日の朝に見たような印象の薄いサングラスにキャスケット帽子を被った男が走ってきてランに早口で急かす。
「ちょ、取り敢えずお前上から退けっ」
「え、ええ」
何が何だか訳が解らなくて呆気に取られながら上から退く。
「船長ー!?生きてますか!?止血するから血液持ってこい誰かァ!」
ローに呼び掛ける男に船の扉に向かう男と、人と人が飛び交い理解し終わらない状態であっという間にローを抱え中に姿を消した男達以外、甲板には指で数えられる程度の船員しか残らなかった。
船の中から出てきたペンギンと帽子に書かれていて上に赤いボンボンをつけた男がこちらへやって来てランへ言う。
「何か用事があったんじゃないのか?今の船長の事は忘れてしまっていいから向こうの船へ行くといい……固まる気持ちは分かるが男心は複雑なんだ、出来れば察してやって欲しい」
頷いたのは覚えているが、どうやってキッドの船まで来たのか覚えていない状態で意識を戻したのはキッドの女、と呼び掛ける声。
放心していたのだと気づくと入れ替わりをまだ知らないキッドの存在を無視しながらランはふるりと身体を揺らす。
「あの男変態じゃないのおおおおお〜!!!」
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