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一応お邪魔をしてしまうので船員とも顔を見合わせた。
結果論を言うならば涙目で済まなかったと言っておこう。
皆、例に漏れず顔が怖かった。
とてもではないがハートの海賊団とは比べものにならない程雰囲気が違う。
えぐえぐと泣きながらランに手を引かれ彼女は宛がわれている自室に招いてくれた。
泣き止むとプルプルプル、とローに渡された電伝虫が鳴ったので応対する。

「もしもし」

『何もされてねーか、泣かされてねーか、ユースタス屋はさぞかし顔が怖いからな。泣いてもしゃあねェ。それより風呂はもう入ったか?もし入ってねェなら構わず俺を呼べば』

一気に捲し立てるローの声が途中で途絶え代わりにペンギンが出る。

『悪いなリーシャ。船長が果てしなく鬱陶しかっただろ?一応ローキックを食らわせておいたから暫く起きない』

「あは、は。ありがとう、ございます……」

『今は楽しめ。グランドラインで再開なんて滅多にないからな』

「はい。あ、ローさんにお休みなさいと伝えてもらっても構いませんか?」

『フッ、お前は優しいな』

「や、優しい、なんてっ。とんでもないです!」

そうしてベタベタに褒められ会話を終わらせると受話器を置いて切った。
ランがニヤニヤと笑みを浮かべて問うてくる。

「今の人ペンギンっていうんだ?ふーん。なかなか誠実な人みたいね。あの変態外科医よりはマシそう」

「ペンギンさんは、優しい人でいつも困った時は助けてくれるんだ」

「へぇ。私、ペンギンさん推しにしとくわ」

「へっ?」

「まぁ海賊の時点で微妙だけど」

「わ、わたっ、私、まだそういう色恋の話はないよぉ………」

カァァ、と顔が赤くなる。
やはり女同士が集まればそういう類いの話になるわけで。
ランには誰かいないのかと聞くといるわけがないと即答するのでつい勿体ないと思ってしまう。
彼女は自分と違って軍曹という同じ女ながらに立派な肩書きを持っているし、才色兼備を現すならばランがぴったりだ。
なのに男に興味を示さないなんて。
ならばキッドはどうなのかと尋ねれば直ぐに論外だと一蹴される。
うーん、と苦笑するとお風呂に入ろうと言われ付いていく。
ハートの海賊団と同じぐらいの浴場の広さで二人だけの空間は新鮮だったが裸のままなのでタオルを巻き付けても恥ずかしかった。
洗いっこなんて本当にお泊まりのお約束をして楽しかったし、上がった後は冷やしてあった瓶のフルーツ牛乳というものも飲んだ。
とても甘くて美味しかった。
その後はずっと喋り続け気づくと夜中を過ぎていたようで眠くなりそのまま就寝。
朝起きるといつもの風景ではないことに一瞬固まりそういえばキッド海賊団の船だということを思いだしホッとした。
朝ご飯は、普段は食堂のような場所で取るらしいがリーシャの気持ちを汲んでくれて自室にまで持ってきてくれたラン。
本当に怖がりな自分が情けなくなる。
落ち込んでいると電伝虫が鳴り受話器を取るとローの声が耳に入ってきた。

『朝のラブコールだ。決してストーキングじゃねェぞ。いや、その前に、だな。おはようリーシャ』

「あ、おはようございます。トラファルガーさん」

『……………くっ!』

「??、いかがなされました?」

『っ、いや、なんでもない』

そう何かに耐えるかのように答えたローはまた昼に会おうと言ってきたのでわかったと約束した。
お世話になって挨拶もなしは失礼だと思い怯えながらも船長に頭をぺこりと下げる。

「泊めさせていただき、あり、が、がとう、ご、こざいまし、たっ」

「………ああ」

「っ!」

「リーシャ!最後までこの凶面を見ながらよく言えたわ!偉いっ」

「ふぇぇ、怯えて、ごめ、んなさい」

「………謝んじゃねェよ」

「チューリップうう!」

「俺が何したっつーんだ!?」

そうして一日のキッド海賊団のお泊まりは終了した。
次はハートの海賊団なのだがランは楽しみという顔をしていなくて、とても不機嫌に潜水艦を睨み付けている。
そして何故か後ろに保護者のようにいるユースタス・キッドもいて気まずい空気に早く来て欲しいとローの登場を初めて切望した。
そわそわとしていると黄色い潜水艦の扉が開き刀を担いだトラファルガー・ローが出てきてこちらを一瞥するとキッドとランを見てニヤリと笑う。

「ユースタス屋、リーシャに手ェ出してねーだろうな?」

「そこまで飢えてねェよ。えめェと一緒にすんな」

「あ"?」

「やんのかァ?」

「そこまでにしなさい!!見苦しいわよ!」

喧嘩が始まろうとしている中、ランの怒声が響き二人の男の睨み合いがピタリと止まる。
相変わらず凄いなぁ、と思いながら感心。
ローが咳払いし改めてリーシャに向き直る。

「待っていた。ベポがお前とおやつを食べたいらしい。後で顔を見せに行け」

「は、はい。わかりました。あの、ランちゃんを本当に泊めて下るのですか?」

ローはその問いに勿論だと頷いた。


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