09
「リーシャ。何処に行きたい?ショッピング?それとも甘味屋?」
甘味なる和風の菓子を好むランの提案にリーシャは眉を下げて笑う。
「それもいいけど……えっと、ユースタスさん達は大丈夫なの?」
キッド達を指す言葉にランは顔をあかさらまに、しかめた。
「ユース……あのチューリップは別に関係ないわ。リーシャとの楽しい時間を邪魔なんてさせない」
「そういう意味じゃ……」
本来、聞きたかった質問の欲しかった答えにリーシャは苦笑する。
ランはキッド関係の話題になると、ぶつくさと態度が刺々しくなるようだ。
(キッド海賊団の船長……確か、三億越えの賞金首だよね……)
ローよりも、一億以上割り増しな金額にリーシャは冷や汗をかく。
三億越えと一億越えの二人のルーキーがいる船にランは乗っていたのだ。
よく平気でいられるなぁ、とリーシャは身震いした。
「リーシャ?」
「えっ、な、何?」
狼狽しながら返事をするとランは、心配そうに顔を見てきた。
「どうかしたの?は!ま、まさかっ、まさかあの外科医に何かされたの!?」
「え?え?」
「あんの変態野郎!海に放り込んでやる!」
何故かはやとちりして危ない思考に入っている彼女を見て、慌ててリーシャは訂正し直す。
「ち、違うよ、ランちゃん!」
「何が違うのよっ。あの隈とは、絶対にウマが合わないわ」
リーシャはランの台詞になんだか、すんなりと納得できた。
二人はよく似ているが、その分相手同士の波長が合わないのだろう。
リーシャはローに追い掛けられる側だが、ランとローはお互いにぶつかり合いそうだ。
「でも、私……トラファルガーさんには助けてもらってばかりなの……優しい、人なんだよ」
「リーシャ……」
リーシャの物憂いの表情にランも感化されたように目を伏せる。
「リーシャを洗脳した上に誘惑したなんて……潰す!」
「ええ!?」
リーシャの気持ちとローの人間性は、どうやら彼女に伝わらなかったようだ。
それどころか、火に油を注いで強火にしてしまった。
「ラ、ランちゃん!あ、あそこに甘味屋さんがあるよぅ!!」
「え!行きましょ!私の奢りだから(キッドからもぎ取ったお金)」
「えっ、わ、悪いよそんなの」
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