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06


それにシャチは照れた様子で顔を赤くすると、反対側からビリビリと凄まじい殺気を感じた。

「シャチ、俺の台詞を取るなんていい度胸だなァ?」

「せ、船長……わァァァ!?」

自動的に二人の追いかけっこが始まった。
シャチは食堂の扉を開けると逃走する。
ローは逃がさないとばかりに後を追う。

(仲いいなぁ)

リーシャが一人残された食堂でそんな事を思いながら、テーブルにある椅子に座る。
それからしばらくするとハンクがリーシャの食事を持ってきた。

「お、船長達はどこ行ったんだ?」

ハンクは周りを見回しながらリーシャに尋ねる。

「シャチさんと追いかけっこしてるみたいです」

ローが何故シャチを追い回しているかという原因に気がつかないリーシャ。
それを聞いたハンクはニヤニヤと笑う。

「なるほどねェ、ちょうどいい。お嬢さんに聞きたいことがたくさんあったんだよな」

「え?私に、ですか?」

ハンクはリーシャに頷きながらテーブルの向かい側に座り、食事のトレイをリーシャの前に置いた。

「ありがとうございます。いただきますね」

「どうぞ。そんな事言ってくれんのもお嬢さんぐらいだ」

リーシャはハンクに笑いかけると、目の前にある食事を食べ始めた。

「まぁ、船長があんな男だとは思わなかったなァ」

「……?」

ハンクが顎を摩りながらニヤリと笑う。
意味の理解できない言葉にリーシャは首を傾げる。

「恋はいつでもなんとかって言うけどよ。まさかここまでとはねェ」

「そ、そうですか……」

ローの愛情表現にはリーシャも感じるところはたくさんある。

「良い意味でうちはにぎやかになったがな」

「確かに海賊なのに珍しいですね」

今まで、海兵として町で活動していた時は海賊という厄介な人間にかなりてこずらされた。
そんなリーシャが珍しいと思うのは、他の海賊とは違うハートの海賊団がまだ温厚な雰囲気だからだ。
温厚だが、根はやはり海賊だが。

「んでお嬢さん。うちの船長はどうだい?」

「どう、と言われても……」

「なかなかの色男だし、強さも申し分ないだろう?」

今だニヤニヤとからかう笑みを浮かべるハンクにリーシャは答える方法がわからなかった。
確かにトラファルガー・ローという海賊団を束ねる船長の器には、リーシャも驚くほどだ。
しかし、だからと言って好きになるだとか色恋うんぬんとは別問題だと思う。
好かれることに悪い気はしないが、リーシャの立場が海兵である以上、この話は一生何もないだろう。
それに、ローとリーシャは傍から見ても住む世界が違い過ぎる。
この壁は壊されることはないといえよう。

「まァ、考える時間はたくさんある」

「え?」

「お嬢さんの心を手に入れることに関して、あの人はどんな手段でも使うだろうしな」

驚きに目を見張るリーシャにハンクは何か考えるようにフッとまた違う表情を見せた。
まるで何かを見据えるように。

「ま、お嬢さんが落とされるのは時間の問題か」

「お、落とさ……!」

赤面するリーシャにハンクは面白そうにハハハ!と笑って厨房の奥へと消えていった。

(ハンクさんって、嵐みたい……)

色々とリーシャの中に投下していったコック。
リーシャは去っていくのを見送ると熱々のコーンスープを手に取った。


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