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誕生日を迎えたローはリーシャに来て欲しい所があると言い、一枚のチケットを寄越してきた。
それを見た瞬間、ケーキに刺さっているローソクで消そうとした自分は間違っていない筈だ。

「なんであんたと温泉に行かなきゃなんないの?適当に近場にある銭湯に一人で行ってきたら」

「県外にあって、観光目的で行きたいんだ……今日は俺の誕生日だよな?」

(こいつ、)

「誰にたかってんの。私は学生の身分であって、仕事もしてない子供のうちにあるんだから、叶える義務はない。よって、行かない」

お年玉の法則に従い、そう断言するが、あのローに敵うか分からない。
例によって、構えていると彼は目をシュンとさせ落ち込む。

「行きてー。なァ、俺の為だと思って一肌脱いでくれよ」

「は?温泉は一肌脱ぐだけじゃ済まないから嫌って言ってんでしょうが」

「別にリーシャは温泉に入らないでいい。俺だけ入るから、な?」

「………………費用はそっち持ち?」

思わず旅行と言う代物に理性が揺れる。

「ああ。食べ放題でしかも二日制で泊まる」

「ローの親から外泊の許可出てんの?」

勿論、と嬉しそうに報告するローの旅行の魔力にグラグラと揺らされる。
頷くな、と自分に言い聞かせていると悪魔の化身が囁いてきた。

「全部こっち持ちだ」

天秤がガタンと傾く音が聞こえた。








やってきてしまった、温泉の町。

「覚悟、決めるのか」

「やっとか、随分粘ったな」

ローに言われイラッとしたが、来てしまったし、行くと決めたのは紛れもない自分だから我慢する。
指定されたバス停から観光の会社側が企画している指定バスに乗り、三時間程走り続けて、止まった。

(うーん、初めて見たな)

貫禄のある旅館があって、そこへ降り立つと着いた、と息を吐く。
肩が凝った感覚を抱きながら案内の人に誘導されて中に入る。
今日から泊まるこの町は観光地が集まっているので飽きる事はなさそうだと周りを見渡す。

(て、)

「ロー」

「何だ」

「手を離せ」

生意気にも、勝手に手を繋いでくる男に鉄拳をお見舞いしようと片手を握るが、仲居さんが玄関に見えて叩く事は叶わなかった。
もしかして、それを見越してこのタイミングで行動したのかもしれないとイラッとする。
中学生と高校生のカップルと思われている事が癪に触るし、周りの目は生ぬるい。
玄関から上がって、それぞれの客間の鍵を渡される。
ここで仕方がないと妥協した一つに、ローとの相部屋へ通されることだ。
一人一つは流石に駄目かもしれないと、金銭面を考慮した。
いくら彼の側の負担と言ってもそこまで肖(あやか)ろうとは思わない。
部屋に行く前にガイドの説明を聞いてから部屋に荷物を置きに行き、さっそく温泉に入る準備に取り掛かる。

「露天風呂、いいかも」

ローがそう言いながら温泉のマップをバスの中で広げていたの思い出して呟くと、傍にいた彼が楽しんでこいと上から目線で言う。

「ローこそ覗く、なんて真似しないでよね」

前に、勝手に入浴中の時に入ってきた事を思い出して忠告すれば彼はニヤリと笑う。

「お前以外に人が居るのに見るかよ」

「ならいいけど」

「俺はお前以外の他の女の裸なんて興味ねェ」

「………………………石鹸で転んで記憶を落っことしてきたら?」

そう言い捨てて、さっさと己だけで廊下へ出た。


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