クリスマス2
再生すると画面に映し出されたのは、なんと父だった。
声を出せずにいると父が画面で笑って話し出す。
『久しぶり、リーシャ。元気にしていましたか?お父さんはとても元気です。いきなりクリスマスにビデオレターを見せられるとは思わなかっただろうね』
「本当だよ……」
『実はローくんから頼まれたんだ。リーシャにビデオレターを送ってあげて欲しいとね。とても良い子じゃないか』
「だから、騙されてるんだってば……っ」
思いがけないサプライズにローの名前が出てしまい、つい憎まれ口を叩くが本心は満更でもない。
『もうここ数年間、一緒に居てあげられなくて寂しい思いをさせてしまっているお父さんは父親として失格です。でも、遠くに居ても毎日リーシャの事を考えて今日も幸せに過ごして欲しいと願っているから』
「うん……わかってる」
機械相手に受け答えをしても無意味なのはわかっているがせめてもの我が儘だ。
父と喋りたいという。
『誕生日や正月はハガキや手紙を送っているけど、それでも近くにいてあげられない代わりだから苦情は二十四時間受け付けてるからね』
「ふふ……父さんらしーなぁ」
冗談に笑って久々に電話ではない声を聞いた。
『頼もしいご近所さんでお父さんは安心しました。代わりにお礼を言っておいてくれるか?‘娘を一人にしないでくれてありがとう’ってね』
「そーだね、考えとく」
『メリークリスマス。愛してるよ、リーシャ』
その言葉を最後に画面は青いただの背景となった。
そして、いつの間にか目から溢れていた涙に気がついて苦笑する。
ビデオレター一つで泣くなんて。
これはローに一本取られたと悔しくなりながらもクリスマスプレゼントくらいは何か奮発してあげようと密かに思った。
ハッピークリスマス、なんて呟いてみる今日
(ロー)
(ん?)
(プレゼント何がいい?)
(ほっぺにちゅー)
(いやしないから)
(じゃあ俺がする)
――ちゅ、
(!、は!?)
(この世は取ったもんがちだ)
(………………………)
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