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懐かしい母校を目の前に吐き出される物は溜め息だけだった。


(こうやって一生流されて生きていきそうでヤダな)


もう一年以上学んだ世渡りに世間は辛辣だとローに怨念に近いものを無言で送る。
事前にパンフを渡されていて、その一つには赤く丸で囲まれていてこれはローが自分のクラスがするからというものらしい。
勿論リーシャは自分で丸は付けてないのでローが事前に付けておいた物だろう。
というか、最初から相手の砦に赴く計画は予定にないのだ。
何故わざわざ喜ばせるような事を自分がしなければいけないのかと思う。


「思い通りに行くと思ったら大間違い」


確かに文化祭に行くと行ったがローのクラスに行くとは言っていない。
内心ローを出し抜けた心地に口元が微かに上がる。


(先生達に挨拶とかめんどいから辞めとこ)


そそくさとローのクラスとは別の場所に向かうと、前方から黄色い悲鳴が聞こえてきた。
リーシャの在学中にそんな小説めいた展開は見たことがないので首を傾げる。



「やな予感……」


その黄色い複数の声は段々近付いてきて曲がり角の先を注視。
すると中学生の女子らしい女の子達が何かを囲むように集団で歩いてきたではないか。
周りも驚きギョッとした顔を浮かべ何事だと注目している。
嫌な予感は段々現実味を増し、こんな真ん中にいるのはヤバイと本能で察した途端端へ寄った。
人混みに紛れる様に身を竦めると集団がどんどん目の前にやって来る。


「ん?リーシャの匂いが……ちょっと離れろ」


何か聞こえてはいけない単語に聞こえないフリをしていると集団がパッと離れ一人の制服を来た男子が現れる。
王道の展開をなぞったような登場をした男はローだった。
彼は首を怠そうに捻り、周りを見渡すと見事に目が合い、ゲームオーバーだと直感する。
今日の予定がパーになったと一人悟っていると彼は嬉しそうに笑い周りは黄色い声を上げるという連鎖に辟易となった。
派手な登場をした、彼等の知り合いだと思われたくないのに彼は人目を憚らずにこちらへ無遠慮に近付いてきた。


(クワバラクワバラ)


塩があったら、その隈の無くならない顔に塗りたくるのに。


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