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いつものようにローが家に入ってくると彼は興奮している声音でリーシャの名前を呼ぶので、煩わしく思いながら振り向くといつもと全く違う人物がいた。
「どうだ?」
「ふーん」
素っ気ないのが通常リアクションなのを分かっているローは特に何も言わずに自慢げに後ろを向く。
今のローの姿は私服ではなく北中という中学校の制服だった。
この三月の先にある最終日にローの小学校の卒業式なのだから、もうそんなに経つのかと季節を感じた。
どうやら制服が届いたらしい。
制服の校章がキラリと輝いており、ローはもう小学生ではないのだと実感する。
「かっこいーだろ」
「全身黒でどこが区切りか分かんないだけなんだけど」
本当に全身黒で微かに青っぽい髪とブラウンイエローでまだマシだが、ミステリアス感がとてつもなく漂っている。
きっと中学校でもモテるだろうと簡単に想像出来て内心ご愁傷様と呟く。
後満月に笑うローを見遣って後日頼まれる予感のする卒業式に遠い目をした。
という予感は外れる事はなくきっちり頼まれ、最早諦めをテンプレにビデオカメラを手に参上し、中学校の入学式も例外なく参加してしまった。
運良く自分の卒業式と入学式は被らなかったが、逆にローがビデオカメラを持参して、とても小学生と思えない手付きでリーシャの二つの節目を撮られてしまったのだった。
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