05
朝起きようと体を少し動かした瞬間、異変に気付く。
何故、体が動かないのか……と。
正体を辿れば答えは単純だが骨が折れそうな脱力感を感じた。
「いつの間に抱き着いてたんだろ……」
「んー……」
起こすべきか否か迷って時計を見るとまだ六時だったので止めておいた。
小学校の集団登校は確か七時半くらいだったはずだ。
リーシャも小学生の時は旗を持った年上に先導されて横断歩道を渡ったりした。
六年生になっても同学年の子が二人いたので自分がする必要もないと立候補すらしなかったが。
思い出を回想し終るとローの腕から出ようと手を動かす。
(ちから、強っ)
少し力を入れたぐらいで全く解けない事に少し焦る。
小学生がこんなに握力や筋力が強いわけがないともう一度体力を消費させた。
「はぁ……はぁ、も、最悪……」
多少は効果があったが緩んだ途端に抱きしめ直される結果になり焼石に水。
もう絶対起こしてしまおうとローの耳に口を近付ける。
「ロッ、っっ!」
呼ぼうと口を開いた瞬間、二つの目が開いてリーシャの顔に小さな唇が迫り鼻に当たる。
秒速の出来事に放心してしまい五秒程時間を捧げてしまう失態に気付く。
「はっ、な、にやって」
「鼻にくちびるが当たった。たまたまだ、悪かったリーシャ」
「いや、今のは絶対わざ」
「そんなわけねー。ねおきはねぼけるんだおれ」
「…………………ああそう」
もう考えるのもしんどい。
先程のローは寝起きと言っていたくせに、目だけはガッツリ開いていたように見えたのはリーシャの錯覚だったということにしよう。
リーシャが学校から帰宅して玄関に立ち扉を開けようと鍵を差し込んだ瞬間、名前を呼ばれたのでまたかと振り返る。
「リーシャ、今日はがっこうでけんこうしんだんした」
「へー……そう」
「まて、リーシャ。まだ話はおわってねぇ」
二度目に呼び止められたが鞄が重くて早く家に入りたいんだと言うとローが「しょうさいは中で」と詳細を話すことが決まっているような口ぶりで家に上がろうとしたので押し止めた。
[ back ] bkm