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文化祭二日目、今日は一日殆どカフェの方に専念しなくてはいけない日となる。
文化祭なら文化祭らしくというクラスの意見で、まるでバイトをしている錯覚を抱く。
ここまで専念しなくても良いと思うのだが、と呆れてもスケジュールは変更されない。
でも、自由時間があってもその時間の埋め方など知らないので助かってはいる。
今日は学校に来てから制服の上からエプロンを付けてお盆と会計表を持ち働く。
それを何度も繰り返しているうちに唐突にガラリと扉が開き一人の男子が入ってくる。
いらっしゃいませと業務用の声音で対応していればその男に手招きで指名され無言で歩み寄り「ご注文はお決まりでしょうか」と言う。

「お前をオーダーする」

「失礼ですが当店にお前、という商品はございません」

「じゃあリーシャ」

「いい加減にして下さいお客様。差もなくば警察(先生)を呼びますよ?」

「待て、俺は冗談なんて言わねェ」

「それはそれでセクハラなんで……てかもう帰ってくれない?」

先程から迷惑な事ばかり言う男はローだった。

「じゃあもうこのスイートポテトでいい」

「畏まりました。なんで私のシフト知ってんの」

「ここの生徒から聞いた」

(人権……!)

良くも話してくれた、と口を開いた見知らぬ女に会計表をへし折りたくなる。
ローが来てしまうから言わなかったのに、と悔しく思う。
帰ったらげんこつだと心に決める。

「ここが学校じゃなかったら気絶前提の威力でトレーを頭に殴り落とすのに」

と言えばローは、そんなに力が込もっているのならぜひ受けてみたい、と恍惚とした表情で返してきた。
鳥肌が立ってしまったのはご愛嬌だ。











「浮気についてどう思う、意見が聞きてェ」

「どうでもいい」

いきなり突拍子のない発言にいつもの事だと適当に流したのだが、相手はまだ諦めていないようで、二度目を問うてくる。
本当にどうでもいいのに。
鬱陶しく思いながら突然何でそんな事を聞くのかと仕方なく話しを聞いて上げる。

「この前クラスの女が言ってた。彼氏が浮気性らしい。ちなみに相手は年上」

「浮気性の年上彼氏ね、はいはい……本当にどうでもいい……」

心底ローにもリーシャにも関係ない話題だ。
そんなに浮気が嫌なら別れれば、という、早い話そういう感じである。
ローが他人事に関して興味を抱くのも珍しいと思いながらふと、先日のキスのことを思い出した。
特にあれからローは何も言ってこない。
前々からそういった、関係を脅かすような時には何も反応がないのはもう普通なのだと認識しているのだが、今回の場合はそれには当てはまらないような気がする。
リーシャは暫し考えて、もうストレートに言ってみた。

「そんなの私に分かる訳ないし……それよりも、もっと肝心な事、あると思うけど……この前のローの意味不明の行動とか」

「…………………ああ」

「それだけ?他に言いたい事はないの?」

(何か白々しい)

怪しい反応にジト目になる。
男はフイッと目を逸らして口をヘの字に歪めた。

「………反省はしてる、後悔はしてない」

「そんなことが聞きたかったんじゃないけど……」

辟易しそうになる。
溜め息を零しながら目を逸らすローの側へほんの気持ち程度近付けば身体がピクリと反応した。

「っ」

いきなりこちらに向いたローが手を肩に両端置いた。
身体を寄せてきて少しずつ顔を近付けてくる。
これはアレか、またキスをするつもりか。
魂胆が分かり待て、と言うのを伝える代わりにローの口を手前で塞ぐ。
すると、不満げに顔をしかめる青年にこっちの反応だと言いたくなる。
許可どころか、そういう関係でもないのにと思い、まずはどうしようかと思考を巡らせた。
あの時の行動の真意を聞くのもどうかと思い悩んでいれば、お風呂の出来上がった音が部屋に響いて、その話題は自然と消滅。
本当はちゃんと言ったらいいのか、忘れたフリをすればいいのか分からなくて、結局話す機会を失い、寝た。


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