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きっと気負けしたのだろうと、珍しく敗北したローに新しい友達(勝てない強者)が現れた事を静かに察する。
ペースに呑まれるなんて、と密かに笑いたくなる気持ちになった。

「さて、そろそろ私達は行くわね。この二人をちゃんとした場所に送り届けなきゃ……また会いましょ」

眠るゾロと食べているルフィの首根っこを掴み、ナミはズルズルと学校の中へと去っていく。
そういえばゾロのクラスの出し物の交代の時間がもうすぐだったと思い出してナミの行動に合点がいった。
しかし、この子供と二人きりは止めて欲しかった。
何故残していったのかと思ったが、ローはこちらの関係者である限り自分が何とかしなければいけないのだと諦めに溜め息をつく。
後ろからトントンと肩を叩かれ後ろを向くとローがキョトンと首を傾げてこちらを見ていた。
どうしたんだと聞かれ、別にと答える。

「まだ行きたい所がある」

「勝手に行けばいいでしょ……」

「嫌だ。俺はお前と行きたい」

即答で言われ眉間に自然と力が入り「へぇ」と答えるとローが極々自然に手を絡めて来た。
所謂、恋人繋ぎをしてくるので大きく腕を振りかぶり指先を遠心力で剥がすと、また手を握ってくる。
今度はノーマルタイプの繋ぎ方で、それでも学校で堂々と繋ぎたくなかったのでブンブンと振ると腕を腕に絡めてきた。
おまけに振って手を離そうとしても、離れなさそうなくらい強く力を入れているのでテコでも動かないだろうと離す事を諦める。
ローを見ると嬉しそうに目を細めて軽やかに学校の中へとリーシャを誘導し、お化け屋敷と看板に書かれた教室の前で立ち止まった。
こんなので怖がるわけがないと辟易。

「言っておくけど私、叫ぶなんて真似しないよ」

言っておこうとローに話しかけたのに彼は分かっている、と頷いて嬉々としてそこへ入る。
受付が女の子でローをガン見みしていたが、ローは特に見向きもせずに進む。
入り口は思っていたよりも暗くて次々とトラップが発動する。
並んでいた時は中から悲鳴が聞こえてきたのに全く何とも思わない。
肩透かしを感じながら進むとローはモゾリと動き更に密着してくる。
暑苦しい、今は何月だと思っているんだと眉をキュッと寄せた。
首に違和感を感じチクッと痛みを感じ「痛っ」と声を出せばローはどうした、と焦った声で聞いてきたので首を傾げる。 

「何か刺さったかも」

今もジリジリと痛む痛みにローがここから出たら見てやると言いサッサと部屋を行く。
お化け屋敷の出口へ行くとローが見せてみろと首筋を見てくる。
どうなってるんだと聞くと赤くなっていると言う。

「虫にでも刺されたんでしょ」

暗かったから、周りに注意も出来なかった事と運の悪さに諦めようと次の行き先をローに訊ねると彼はこっちだと手を引く。
いつの間にか手が繋がれている事に気付くのが遅れ、それを知ったのはちらちらと見てくる生徒の視線に気付いたからだ。
慌てて、というより自然と手を離そうと試みるがビクともしない握力に眉を下げて眉間がキュッと寄る。
幾ら振っても離れやしないその執着レベルに、此処を離れた方が得策だと足早に学校の外へ出た。

「こんな人気のない場所に来るなんて……何考えてんだ?……」

と、言いつつローは手を離さないままリーシャの距離を縮めて木の幹へと追い詰めた。
何かを考えているのはそっちだろうと呆れながらグイグイと肩を押し返す。

「やっと二人きりになれたな」

「別に好きでなってないっての……」

少しずつ顔が近付いてくる気配にギョッとなり、思わずローの頬を片手で挟む。
プニッという感触がして、何とも気まずい空気が流れる。
…………とお互いが無言で見つめ合い、最初に動いたのはロー。
挟んでいる頬からリーシャの手を退かして木の幹へ手を付く。
まるで、捕まえる動作で逃げ道を作らないようにする学園ラブコメのシーンのように。
ローの真意が読めなくてジーッと様子を眺めると、彼は幹に付いていない方の指先でリーシャの顎先に触れて視線をゆるりと合わせる。
吸い込まれるような錯覚に思わず、されるがままになっていると、目がゆらりと揺れた。
瞳の奥に熱くて焦がれるような炎が見えた気がした。

(……?、何、一体……)

「ずっと、こうしたかった」

そう言って、彼は音もなく唇を奪い去った。


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