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LAW side


今まで行動を起こさなかった野郎がリーシャに接触してくる事は薄々気付いていた。
どういった学校生活を送っているのかは知らないが、男っ気のないアイツに安堵していたのだけれど、どうやらそれは仮初めだったらしい。
下校している最中の二人組にたまたま出会ったのはとても幸運だ。
そして、後ろで声を掛けようとしている中学生の男子を見つけ後を追い彼女に想いを伝えようとしている雰囲気を一目で察して歯を噛み締める。
させるものか、とどのタイミングで邪魔してやろうかと策を練っていると、声をかけてすぐに行動を起こそうとしている姿にコイツはアホだと即理解出来た。
明らかにリーシャはアイツを知らないし、認識していないと関係性を見抜き、初対面で早くも彼氏の有無を問おうとしている事に馬鹿かと内心罵る。
どの世界にいきなりそんなことを言う奴が……嗚呼ここにいたな、と一人で馬鹿な事をしでかそうとする男を憐れに思い告白の空気を早めに壊してしまう。
リーシャが困ってしまう未来は簡単に想像でき、賢い彼女は恐らく既に男の恥じらう空気を感じているだろ。
彼女の手を取りコイツは俺のだと声を大にして言いたかったが我慢する。
下手をすると学校でリーシャが『ショタコン』と呼ばれてしまう危険がある。
それは大いに避けたくて、もし現実になればローとの関係や仲に大きな溝や亀裂が発生してしまう。
あくまでここは冷静に牽制しておこうと戦争、イコール恋の戦争と言えばその意味を理解したのか立ち尽くす男に見えない角度で嘲笑った。
あばよ、と内心勝ち誇った心地に浸っているとリーシャが戦争の意味を聞いてくる。


(おれが勝つ、そしておれのもんにする)


新たに決意しつつも、簡単には戦争の意味は教えられないという意味を込めて独壇場があるんだと自分だけが分かっていればいいと一人ごちる。
すると、リーシャが争い事は止めろと言ってくるので、もしかしてローを心配してくれた故の言葉なんだろうかと嬉く思いその腰に抱きつく。


(もっとぎゅうにゅー飲むべきだな)


そうしたら、腰になんて抱きつく事もなく自分の体全体で彼女を目一杯抱き締められるのにと悔しく思った。







何と驚いた事にリーシャが風邪を引いた。
医療に携わる両親を持つローよりも煩く手荒い云々を言う彼女が菌を発生させたというより、学校という菌の溜まり場により貰ってきてしまったのだろう。
クラス及びリーシャに接触した人間を今すぐ滅したくなる気持ちを抑え家に帰ると窓から彼女の家を窺い見る。
きっと移るから入ると怒られるし、へとへとな今の体調をこれ以上崩されるのは本望ではない。
大人しくしていると玄関が開く音がして下を見下げると、休んでいる筈の愛しい女が起きていて、おまけに男が仕切りに家へ上がりたがっている光景にプチンとくる。


「一人暮らしだからっていい気になってんじゃねーぞ」


およそ自身の事を棚に上げた事を口にしたローは彼女と食べようと用意していたお菓子をひっ掴み、そろりとベランダへ移動する。
自分しか知らない場所から家へ侵入し中の様子を窺う。


(むぼーびなやつ)


いや、リーシャはとても利口だからきっとあの男があんまり盛るので面倒になって家に上げたのかもしれない。
彼女の面倒臭さは時としてローにチャンスを与えるがこういう時に発揮されるのは困る。
溜め息を溢し抜き足差し足忍び足で階段を下りると、男子の拙い言葉で説明を受けるリーシャの声がして嫉妬で気が狂いかけるが我慢だと心に言い聞かせ扉に耳を当てた。


(クソやろー、こくはくしかけてやがる)


二度目のチャンスなどくれてやるかと居間の扉をバタンと開け素知らぬ顔でお菓子を持参してきたと家主に告げ二人の前を通る。
テーブルにお菓子を置きその忌々しい二人の距離感を遠ざける為に、間に一度座り、すかさずリーシャの膝の上を陣取った。
取った、とどや顔しながらまるで今知ったかのように男に話しかけ戦争をするのかと問うと前回とは違いごくりと喉を鳴らしイエスと答えたので本気を感じとる。
だが、予想に反して先に答えたのはリーシャで親御の元預かっているローに何かあっては困ると感動に尽きる台詞を言ってくれ、その度に男の生気が薄まるのを感じ人知れずニヤリと笑う。
残念だったなという意味を込めて勝ち組みの表情を男子に向けると引き吊った顔を浮かべた敗者。
もう帰ると逃げ去る男をリーシャは見送るらしく玄関へ行った。


(もう二度とくんな)









恋は戦争


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