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classmate side 2
女子達が興奮した様子で演劇が良い、と連携して手を挙げていた。
何が目的かは知らないが、とても必死に見える。
委員長の二人は順調に決を取り、カツヤも『おもちゃを作ってアトラクションをする』に手を挙げたが人数があまりいなかったので黒板から消されるだろう。
数分後、票数の結果、断トツに『演劇』が多かったので今年の学芸会は決まった。
ローは決まった後でも興味なさげに窓を見ていたが、劇の配役に移った時、女子が言った一言に眉を下げる。
「トラファルガーくんが王子様がいい!」
劇の内容は『白雪姫』。
王子と姫が主役の劇に、隙なく滑り込ませてきた案にクラスの視線はローに一点する。
アイツは熟練された笑顔で視線を受け止めた。
「王子やくなんて向いてない。それよりマジョをやってみたい」
爆弾発言を落っことしたと思ったのに、クラスでは既に賛成の空気が漂っていた。
見事に決まった配役が書かれた黒板を見て内心呟く。
(なんでマジョ?)
魔女はどう見ても悪役で、最後にいなくなる。
そんな役をやりたいと申し出た理由が理解出来ない。
あっ、と思い出し、後ろのローの席を見た。
女子に囲まれているせいで顔がよく見えない。
何気なく横を通ってみても全く見えない状況に脱力。
ローの席からカツヤの席は斜め横に近い場所に位置しているので会話だけなら聞き取れた。
「トラファルガーくんのおーじさまやく見たかったなぁ」
「うん。絶対似合ってた」
「いや、おれはやくぶそくだ」
「やだぁーっ、けんきょー!」
謙虚謙虚、と連呼する女子に呆れた感情が湧くのはどうしてか。
ローは少し声音を低くしてフッと笑った……………ように聞こえた。
「ローくん?」
「ああ、いや……えんげきたのしみだな」
「そーだねぇ」
今の笑い声が聞こえていなかったのか、周りは何事もなかったかのように再び盛り上がる。
カツヤは今の空耳かもしれない声にふと疑問が浮上した。
トラファルガー・ローは誰も信用していないのではないか、と。
その問いは聞きたい気もあるが、聞けるわけがない。
いきなり聞くのも変な目で見られるし、かと言って良い方法も見つからない。
少年は、彼がずっと見詰めていた窓の上空を見て一つ息を吐いた。
classmate side end
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