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リビングに入れば通常の光景であるテレビを見るローがいた。
よく見てみると丸い個体がテーブルに置かれていて凝視しているとローが気付き説明しだしだ。
「これはたまごっちだ」
「私の記憶にあるたまごっちじゃない。進化し過ぎでしょ」
昔は白黒だったのに、今のものはカラーとは。
驚いているとズイッ、とたまごっちを差し出され、気になっていたので躊躇しないで受け取る。
観察していればちょこちょこと動くキャラがご飯を食べていた。
カラーで見るたまごっちはなんだか時代を感じさせた。
ローに返せばやりたいか、と尋ねられ別にと返答すれば本当かと言われ本当だと返す。
確かに人は自分の嵌まっているものを進めたがるものだが、リーシャは自分が興味のないものにはとことん無頓着な性格だ。
なので試してダメだったものにこだわることもしない。
頑固と言われようが冷たいと罵られようが押し付けられる行為は嫌いだ。
ローは暫したまごっちを見てから仕舞う。
ゲームを続行しないのかと疑問に思ったが、それを聞くと嫌味に聞こえる気がして聞かなかった。
別に嫌悪の目で見られることを恐れているわけではない。
「おれ、おまえの好きなことを知りてー」
「……知って何になんの」
「それはまだわかんねぇ。だから知ってから決める」
「じゃあ言わなくても構わないでしょ」
「……たしかにいちりある。けど、おれはリーシャの事をだれよりもくわしく知っておきたい」
「……へぇ」
「好きなたべものは?」
「…………くだもの、とか、かも」
「………………ほんとーにくだものであってんのか」
その二重の確認に、言葉に詰まる。
というのも、今までそんな事を聞かれたこともないし考えた試しもない。
だから万人が答えるものを選んだがイマイチしっくり来ない。
何が好きなのだろうと自問するが答えは見つからず、敢えて上げられるならば食べ物以外の嫌いなものしか浮かばなくて苦痛を感じた。
例えば、人、騒音、雑音、会話、絆、思い出、茶番のドラマ、ハッピーエンド。
つくづく、挙げていけばいく程自分がどれ程歪んでいるか自覚出来てしまう。
嫌になるが、それは、同時に自身も嫌いということに繋がってしまうので、なす術はない。
「で、好きなもんはなんなんだ」
「無音の世界」
「たべものの話だ」
「そーでしたね。好きな食べ物は……まだない」
「きらいなもんは?」
「なし」
「得られたもんはねーな。ほかにきょうみのある事は?」
「……ある意味、ローでしょ」
「おれか?ついにおれのかっこよさに気付いたか。ずいぶんとまたせたな」
「……………………取り敢えず意味を履き違えてることは分かった。ある意味って言ったじゃん。私の周りをうろうろと付いて回ってるから目につくって意味、分かった?」
そうして訂正すると、あからさまに落ち込んだロー。
「ん……でもゆいいつのきょうみが俺なら、構わない」
「も、それでいーよ」
また複雑な言い方をすることに、言い直すのも面倒で諦めた。
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