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運動があまり出来ない子を狙って当ててくる同級生がいるというのがいつの時代にもいるものだ。
そんな苦くて塩辛い思い出がぐるぐると回っている間にドッヂボールの試合が始まろうとしていた。
ローは男子チームにいて、相手も男子チーム。
女子は女子同士で試合をするようだ。
ホイッスルが鳴ると同時にボールが頭上高く上がった。
太陽が反射して手を額に当てて行く末を見ると、手に吸い込まれるようにローの手中に収まる。
女子はこの試合が終わるまで観戦しているらしく黄色悲鳴がグラウンドに響き渡り運動会を思い起こさせた。



「やべっ、トラファルガーがキャッチした!」

「ぜーいん、ちれっ」



何をそんなに慌てているのかと問いたくなる程相手のチームが焦っている。
ローは優等生とクラスに思われている筈なのだが、恐れる理由がわからない。
と、考えていると学校にいる時の行動では考えられなかった俊敏な動きでボールを投げた。
それがものの見事に男子に当たり外野に送ったのだ。



(容赦ないな……)



運動や体育などは優等生として振る舞うことはしないのかと不思議に思った。
再度、女子の歓声が聞こえローの人気の理由がまぁまぁ理解出来たような、気がする。
つまり、運動神経が良くて頭も容量もいい最高の優等生ということか。
チームは後にロー達が勝った。
保護者も参加自由と担任に言われ、ぽつぽつと親達がドッジボールの競技範囲線に入る。
リーシャは保護者の中では飛び抜けて年齢が下だが、だからと言って参加等しない。
務めて傍観に回る。
親達は四苦八苦したり大変そうだったがとても頑張って競技に付いていっていた。







五、六時間目が体育だったので後は帰り支度と『成績表』のみ。
苦い顔を浮かべる子供に対して少しの不安と嬉しさを滲ませた親。
ローも帰り支度をした後、待つ間の時間の合間に学校の裏へリーシャを連れてきた。
保護者と子供の三者面談は時間が掛かるそうで、あらかじめ予定された時刻にならなければ順番が回ってこないらしい。
彼は誰も居ない体育館裏の三段ある小さな階段に座り込んだ。
リーシャも立つ事に疲れたので隣に座る。
本当は帰って指定された時間に来ることも可能なのだが、その時間が中途半端な為に結局学校に居る方が良いという結論に至った。
暫く場の空気は無言だったが、ローはやっと解放されたとばかりに息をついた。


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