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ラブレターならぬ感謝の手紙を貰って数日。
何事もなかったかのように過ごす昼食は一人ではなく二人だった。
勿論、あの手紙にあった『婚姻届』は破棄したし彼はその類の話には触れない。
これは前にキスされた時と同じ状況だ。
昼食を食べ終えるとソファに座りテレビを眺めた。



「わっ」

「やくそく、おぼえてるだろ」

「はぁ?」

「うんどーかいのとき、一位になったらひざまくら」

「あ、忘れてた。っていうかローだって忘れてたんじゃないの?」



確かに、記憶にそんな約束をした覚えがある。
突然隣に来て膝に頭を預けてきたローを見下げながら問う。



「タイミングをみはからってた」



もう何も言うまい。








冬に入ったのだと感じたのは肌寒い空気にマフラーが必需品になったからだ。
相変わらず二重人格の仮面を装着しているローも耳当てやマフラーをしている。
よく見てみるとブチ模様の手袋をしていた。
聞いていないのに、おれがえらんだんだと自慢げに言っていた。
無言で返事を返しても目敏く機能する耳を使わずスラスラと喋る。
今日はクラスで雪合戦をしただとか、ベポの像を作っただとか。
とにかく口がまるでベルトコンベアのように止まる事を知らない。



「こたつあったけー」

「足、邪魔。折り畳んで」



リーシャの家で毎年活用され、重宝しているコタツに腰まで入れてヌクヌクとする。
やはりローも例外ではなく無遠慮に侵入してきた。
犬のベポに関してはコタツの中に収まっている。
二人と一匹が一つのコタツを共有している図が見事に完成していた。



「リーシャ、みかんはどこにある」

「あるわけないでしょ。ここにはジャガ芋しかない」

「なんだと。それはたいへんだ。ベポ」

「ワン!」



まるで言葉が通じているかのように話すロー。
蜜柑を探すんだと無謀で無茶苦茶な事を言い出す。
ベポに探せるわけないし、見つかるわけもない。
再度雑誌に意識を戻すリーシャの視界の隅に影が横切る。
犬はコタツで丸くなるはずではなかったのかとベポの忠誠心に少し驚いた。
そして、有る筈がないのに蜜柑が入っているダンボール箱を引きずってきたのだ。
いやいやと目を疑う光景に、ローはベポを撫でてよくやったと褒めていた。



「持ってきたの?」

「ああ。きのうたくさんとどいた」


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