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マーガリンを取り出し専用ナイフをその上に置く。
基本的にリーシャの朝食は一人暮らしな為、こんなものだ。
ローが朝から来る時は休日なら少し手を加えるが自分一人なら文句もないし不満もない。
寧ろ楽だから食パンやカップ麺は重宝している。
チン、とトースターが鳴る合図に皿を取り出しパンを乗せてテーブルへ置く。
全ての一挙一動を見ているつもりのローは微動だにせずリーシャを見上げていた。
ウキウキとした表情を浮かべてジッと見てくるが、無言でパンにマーガリンを塗って食べる。





食べ終えパジャマから着替えるとすかさず手を握られ外へ連れ出された。
そこのところは予期していた事なので特に文句は出ない。
玄関先に出るといかにも新品の自転車が置いてあった。
黄色が全体的で黒い線が所々に施してあり、一瞬頭に『ハチ』や『鬼』のイメージが浮かぶ。
そういえば、ローは時々黄色調の黒い線が入っていてニコニコしたマークが入ったパーカーを着ている事があることを思い出す。
こういった色合いが好きなのだろう。
自転車を見つめていると彼がサドルに跨がり仕切に「れんしゅーするぞ」と言ってくるので近付く。
リーシャの家の前にある道路は基本的に車が通る事は珍しく歩く姿も少ない。
なので、自転車の練習場所としては妥当だ。
長いし広いからぶつかる事は早々ないと思う。
落ち着かない様子でこちらが自転車を押す様に足してくる姿に後の荷物置きの役割をしている場所を持つ。



「どこまで押せばいいの」

「ずっと。はなすなよ」



何ともベタな台詞に内心笑う。
アニメでもテレビでもよくある場面だ。
まさかそれを生で聞く日が来ようとは、全く想像していなかった。
これは「離しても構わない」と暗に言われているのかと少し考えてしまう。
言うなれば逆の事を言っているようにしか思えない。
リーシャはローを見遣ってから押すと彼はペダルに足をかけて動かした。
少しずつ早くなるスピードにもうそろそろだろうかと離すが、離した途端に自転車が止まる。



「はなすなって言っただろ。もういっかいな」

「……今の絶対漕げてたのに、勿体ない」

「こけるのはいてーだろ」

「傷を作ってこそ男の子でしょ」

「きずなんてつけたら、なおるまでめんどくせぇ」



本当に嫌そうな顔をしてもう一度自転車をこちらに戻す。


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