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女子達が黄色く騒ぐ中でローは真剣な表情で立とうとしている。
ピーッと笛の音が聞こえたら、一番上にいた生徒達全員が一様に立ち上がった。
どうやら合図だったようだ。
拍手喝采で形を徐々に崩していく子供達はやり切ったという達成感に満ちた表情で互いを見遣り手を合わせてハイタッチしていた。
青春の一ページといったところか。
誰も心で呟くリーシャに「貴女も学生でしょ」と突っ込んでくれないことを除いても、青春だと染々(しみじみ)感じた。
自分も学生だが、あんな風に汗水流して青春した記憶は今だ皆無。
寧ろ、本を読んだり友達とお喋りをほんの少しばかりするくらいだ。
男女の差というのもあるのだろうが。



(サバサバしてることくらい自覚済みだし)



一人で暮らす内にそうなってしまっていく過程は一時期感じていた。
ローが家に来るようになってからは感情が普通の時でも出やすくなったようにも――やはり過言だろう。
ほだされるような気持ちにきっぱりと考え直した。
ローが特殊だから、自分がそれに慣れただけだろうきっと。



『休憩を挟み次第、閉会式を行います』



アナウンスが流れハッとカメラを再度抱える。
閉会式を撮る必要性はないように思ったが、一応撮るに越したことはないだろう。
責任感が伴う運動会はこれっ切りにして欲しい、切実に。





閉会式が終わった後、シートやビデオカメラを仕舞う。
周りも帰り支度をしていたので、それに習って見よう見真似でグラウンドを歩く。
人が多いのでなかなか前に進まない。



「リーシャ」



声が下から聞こえ振り向くと息を切らせたローがいて驚いた。
もう終わったのかと尋ねれば頷いてランドセルを見せてくる。
体操着のままで帰宅するのだと言うので適当に相槌を打った。
付いてくる事はいつものことなので歩き出す。
自転車を駐車場から出せばローが勝手にランドセルをカゴに入れてきた。



「ランドセルおもい」

「…………今回だけね」



運動会の後なので身体が疲れているのだろうと思い、今回だけは大目に見てあげることにした。



「ベポとあそぶ」

「勝手にすれば」



ぶっきらぼうな言い方だったのに、彼は上機嫌でリーシャに笑いかけてきた。











いつもの夕暮れがどこか違って見えたのは自分の世界が少しずつ変わっていっている証拠なのだろうか


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