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いつもの余裕な表情と相まってローの真剣な顔に魅入る。
競技様の空気砲が鳴り、一斉に走り出す子供達。
運動場に響き渡る声援とハチマキを揺らして全力で足を動かす姿に人知れず手に力が入った。
何故だろうと疑問を持つ余裕もないままローを撮り続ければ、ゴールテープを切る瞬間を確かに見届けた。
彼は豪語した通り一位になったのだ。
こちらをすぐに向いてニッと笑いかけたのでカメラを下ろして、聞こえないことを前提に「おめでとう」と呟いたのは一位になったおまけだ。
決してご褒美……ではない。
リーシャは自分にも言い聞かせて再び次のプログラムまで本を開いた。











次の競技は貸しもの競争だそうで、ローの番が回ってくる際に紙を手にしてこちらへやって来た。
一体何を借りに来るのかと考えていれば「眼鏡」と一言言われ思わず眉を下げてしまう。



「持ってない」

「持ってるだろ」

「知ってるくせに。無茶振り」

「………まぁいい」



何がだと突っ込みを入れる前にローはクラスメイト達の所へ向かい何やら話していた。



「ローくんわたしの使ってっ」

「わたしの!はい!」

「だめっ。ローくんはひとりのめがねだけで十分だって言ってるでしょ」



もう、大乱闘(?)だった。
戦や合戦を思わせる熱い女子の猛アピールにローは菩薩(ぼさつ)様もびっくりな笑みを浮かべる。



「悪いな、わざわざ。全部もらっていく」



即倒しかける女子やきゃああ!と感無量に叫ぶ声に茫然と見ているしかない。
釈然なんて言葉では足りない程、釈然としないがクラス及び学校での彼の評価には想像を超えるものがあった。
やっとゴールしたローの手にはたくさんの眼鏡。
一位ではなかったが、ある意味彼は勝ち組だろう。
目を見張る同級生を尻目に三位の場所に座る様子はやはり目立っていた。
確かに『優等生』『転校生』『優しい』が共同生活しているローの男子像は女子達にとってオアシスのような人間に見えるだろう。
目を半開きにしたくなるが心の中だけで納めた自分は頑張ったと思った。
彼の性格をよく知っている為、女子達がどう見ても詐欺師に騙されている様にしか見えない。
次は玉入れだという内容だが、どうやらローは参加しないようなのでビデオカメラを置いた。
子供達が各玉入れの場所に移動して合図と共に白い球と赤い球をカゴに投げ入れる。


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