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最後にビデオカメラを手に取ると今朝のやり取りを思い出す。



『ビデオカメラ?』

『おふくろがわたしてきた。リーシャに録ってきてほしーんだそうだ』

『…………………』



ビデオカメラを渡され、その時一緒に付いていた紙に「録画お願いします。毎回ご迷惑かけてすいません」と丁寧な字で書かれていた。
勿論脱力するしかなかったし、撮るしかない。
自分の受けてしまった役目を恨めしく思いながらそれらをレジャーシートと共にカバンに入れる。
運動会は十時からだが、場所取りをしなければいけないとローから聞いていたので八時の今から出掛ける用意を完了させたのだ。
開いた時間の暇潰しは読書でもしていようかと思い、早速傘を持って小学校へと向かう。





小学校へ着くと既にちらほらと場所取りをしている人達がいて驚いた。
そういえばリーシャが小学校の時も父親が朝早くから慣れないお弁当を作り運動会などに来ていた記憶がある。
回想しながら殆ど埋め尽くされている前線の場所で空いている場所を探しレジャーシートを敷いた。



(長いな……)



読書を始めて早一時間半。
なかなか進まない時計の針にもどかしくなる。



「もうきてたのか」

「……………いや、ロー……学校は?」

「ぬけだしてきた」

「優等生が何してんの」



傘の隙間から体操着が見え声をかけてきたローを見て思わず目を疑う。
まだ学校に居るはずなのにと思っていると、今は休憩中なのだそうだ。
ここへ来ている小学校はローだけのようで何食わぬ顔で居座る。
体操着の名前に『トラファルガー・ロー』と記入されていて今日は運動会なんだと改めて感じた。
早く学校へ戻るように言えば素直に校庭にある靴箱の場所まで帰っていく。
最後まで見送ると本当に優等生として見られているのかと思ったが、前に家庭訪問に来た担任の反応を思い出し一人納得した。
その時、またローが隣にいる事に気付き目を見開いてしまう。



「今、学校に入っていったはずじゃ」

「言うのを忘れてた」



それよりも早く教室に戻った方がいいんじゃないかと思う。



「百メートルそう、一位になったらごほーびがほしい」

「……また私を嵌める気でしょ」

「こんどはひざまくらな」

「……ひざまくらでいいんだ」

「ああ、それがほしい」



確かめるように聞き直すとローはしっかり頷いた。


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