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坊主めくりと言えば坊主を引くと持ち札を手放さなければならず、姫が出れば手放されたカードの全てが手元に入るというルールが存在するゲーム。
勿論知ってはいるがその他にも弓を携えたカードや絵の人間の下に引かれている畳みの色が綺麗なカードにも独自のルールが存在する。
ローが言っているのは多分そういうことだと推測すれば彼は簡潔に話し出した。
「ぼーずとひめのルールのみしか使わないことにする」
「わかった」
単純で運任せの勝負が始まった。
最初はジャンケンでどちらが先か決める。
負けた手を見つめてローを見遣れば勝ち顔でこちらを見ていた。
まだまだ勝負はこれからなので思い直してカードを引く。
最初のカードは普通に男性だったので一回しか引けずローの番になると姫を引いたようで三回連続で引いた。
ツキはロー側にあるのかと内心悔しくなるがめげずにリーシャも引く。
(……………二回目に坊主……)
もはや運に見放された感が否めない。
そして、ついに残りの一枚が残されリーシャとローのカードは互いに坊主を引いてしまった為に中心に置き去り状態になった。
最後はローの番で終わりなのでこれで勝負が決まる。
自分の手札は二枚、ローの手札はなしなのでもし彼が普通のカードを引いたらこちらの勝ちだ。
「これでさいごだ」
ごくりと無意識に息を呑みローの手元を凝視する。
「あんまりみつめるな」
「だって……真剣勝負だし」
照れたように言うローにそう返せばあっという間にカードを取った。
「あっ」
「……ふふふ」
「…………なに、その笑い方」
今まで聞いた事のない声音に嫌な予感をひしひしと感じる。
ローは引いたカードを置くと中心に積まれた大量のカードを手にして笑みを深くした。
どうやら負けたのはこちらのようだと悟る。
「……やくそく」
「わかってるけど……はぁ」
結局、合い鍵は奪還出来なかった。
おまけに添い寝をしなければいけなくなり、損な気分になるしかない。
いそいそと百人一首を箱に入れたローはベッドに向かうように言ってきたので素直に聞き入れる。
手前に来れば後ろからやんわりと押されベッドに思わず倒れ込む。
何をするんだと口を開く前にローも寝転んできてもう少し向こうへと要求された。
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