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ローも椅子に座るとシチューを食べ始めたので自分もスプーンを手にする。
我ながら美味しかったので満足感が胸を占めた。
彼もまた感想と褒め言葉を口にして嬉しそうに食べていたので、すっかり『合い鍵』の事を忘れていた事を思い出す。
もう諦めるしかないのかもしれないと、窓から侵入してくる子供の行動を脳裏に浮かべて内心ため息をついた。






昼食を終えて再びローの部屋へ移動した。
少し眠気を感じ目を数回瞬きさせると相手が反応して眠たいのかと聞いてくる。



「少し」

「おれのベッドを使えばいい」

「うち隣だし帰った方が早いでしょ」

「なにいってんだ。きたばかりだろ」

「だってする事ない」

「たくさんある」

「例えば?」



そう言えばローは机の引き出しからトランプを出してきた。
寝るよりも遊んだ方が有意義かとリーシャの中の天秤(てんびん)が傾いたのでそちらに決めた。
最初はババ抜きをする事になり手加減をしたのだが、ローはとても強いことを知る。
手加減なんてしなくても向こうは心が読めるのかと思う程的確にカードを引いていく。
次は七並べをした。
これなら平等にカードが分けられるから勝てる可能性があると見越したが、それも負けて驚くしかない。



「かけをしたい」

「はぁ?するわけないじゃん」



負け戦に賭けるなんて誰がするものかと却下すれば、ローが愉しそうに笑う。



「おれがかったら――おれのベッドでいっしょにそいねする」

「だからしないって……」


「とししたにまけるのがくやしいからか」

「挑発とか私には通じません」



ピシャリと言い放つと彼は舌打ちをした。



「じゃあ、おれが負けたら『合い鍵』を渡す」

「……………鍵は一つ?」

「ああ。一つだ」



理性が『合い鍵』に揺れる。
かなり不本意だし、ローが勝手に合い鍵を作ったからだが勝負に参加するしか選択肢がリーシャにはなかった。
ローはトランプではなく今度は百人一首を出してきたので思わずまじまじと見つめる。



(………………なんで百人一首?)



小学生が百人一首をする事は珍しくないとは思うが、ローが何故これを選んだのかが疑問だ。



「ぼうずめくり」

「坊主めくりって……あの?」

「むずかしいしいルールがたくさんあるけど、かんたんなルールのほうでしょーぶだ」


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