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気を取り直し冷蔵庫を開ければ、



「……………………ロブ、スター……?」

「今日のよるにおまえと食べようとおもって買っておいた」

「出費源は」

「おや」

「高い……絶対」



ロブスターなんて生まれてこの方テレビの画面の中でしかお目にかれた事しかない。
目の前に写る大きな“エビ”は見事にその存在を放っている。



(いやいや、他にも食材はあるでしょ)



「………………キャビア、なわけないか。ごはんの上に乗せるオカズだきっと」

「ねだんはここら辺では高いものがそれぐらいしかなかったから、それでだきょーした」

「一体お金いくらかけて……しかも子供だけしかいない時に」

「おまえととくべつなよるをすごすためのプランの一つにすぎねーよ、こんなの」

(………………………言葉でない)



どんな言葉も無効になりそうなくらいの張り切り様に返す言葉も見つからない。
色々と反応する事にも疲れてキャビアやロブスター、その他の食材を掴まないようにして、残りの食材を吟味(ぎんみ)しながらメニューを考えた。



「何か食べたいものでもある?」



考えつかなかったのでローに意見を聞くといつもの「おまえのすきなもので」という大人ぶった台詞はなく、暫く考えるような素振りをして、



「シチュー」

「じゃあそれにするから向こうに行ってて」

「ことわる」

(……即答とか、本当ありえない)



生意気に反論してくる表情は揺るがない心情を思わせ、それ以上言うのも疲れるかと思い諦めた。
材料もシチューのルーもあったので作業は順調に出来たし、ルーが入っていたパッケージの裏面に調理法が記していたので楽だった。
作り終えれば皿に盛った白いご飯にシチューをかけてテーブルへ運ぶ。
その際、ずっとキッチン越しにある椅子の上で作業を見つめていたローが手の平を前に差し出してきたので、なんだろうと疑問を抱くと同時に彼が一言口を開く。



「かせ、おれもてつだう」



リーシャが何か言う前にシチューの皿を掻っ攫われた。



「お茶もおれがするからもうおまえはなにもするな」



その言葉の中にある意味に気付いたリーシャは言われた通りにジッと座ってローが二人分のコップにお茶を注ぐのを眺めた。
きっと彼も何かをしたかったが出来る事がなかった、というところだろうか。


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