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怪我の部分を救急箱の道具で手当てしながら彼は詳細にベポの事を語る。
ローにしては執着と愛着を持っている顔をしていた事に意外な一面を知った。
喧嘩に勝った事は確かに名誉だが、優等生を名乗るローにとってはまずいのではないかと聞けば、
「だまっとくよーにおどした。それにたこうのやつらだったしな」
「………………へー」
他校の生徒ならまだマシかと感じ、ローを敵に回すと恐ろしいことも覚えておこうと思った。
何となく察すればリーシャは不意に浮いてきた疑問を口にした。
「犬が欲しいなら家で飼えないわけ?」
「うちは二人がいりょーのしごとしてる」
「あー……そういうこと」
改めて言われ、納得せざるおえなかった。
確かに無理だろうと思えば、ローの顔が落ち込んでいるように見えた。
学校帰りの道で足音が聞こえ前を歩いていれば、前に小さな影が走り込んできた。
ぜぇぜぇと珍しく息の上がった身体をリーシャへと進めてくるロー。
「ベポがっ……いなく、なった」
「誰かに拾われたんじゃない」
「そんなわけ、ねー」
否定の言葉は弱く説得力に欠けた。
そんなローを見ることなくリーシャは帰路を歩き出す。
続いて後ろからゆっくりと付いてくる気配がしたのでこのまま家に来るのだろうと思った。
自宅の玄関に入るとすかさず門扉を閉めて彼を押しやる。
「帰れば」
「べつにいいだろ」
「いいわけない。自分の家があるでしょ」
押し問答する二人はお互いに譲らない様子。
その時、二人の耳に動物の鳴き声に似た音が入ってくる。
「……!」
リーシャはしまったとばかりに顔を歪めて門扉を閉めにかかる。
ローは最初、ぴたりと固まったが今のことを投げかけてきた。
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