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12


その日は、家で秋休みを存分に満喫している最中だった。
ローが何やらリーシャの家で空いている部屋を借りたいと言っていたので了承すると彼は喜んだ。
あのローが、喜んだことを怪訝にかつ怪しく思いながら見送った。
何をするんだろうとそれはもう気になったし、知りたかったのでジュースを持っていく事を口実にして部屋へ向かう。
特に何か臭うわけでも呟いているわけでもなかったので安堵。
コンコンと扉をノックすると「入っていい?」と尋ねて遠慮なく扉を開ける。
言っておくが無礼講だとかマナーを違反したわけじゃない。
ただ、開けられて困るような事をしているとリーシャ的に困るので…………おあいこだ。
自分でも少し目茶苦茶な事を並べていることはわかっているが、なんせあのローが笑ったのだから見過ごせない。
扉の向こうにはいつもと変わらない目をした子供がいてやっぱり思い過ごしかと内心胸を撫で下ろした。



「ジュース持ってきた」

「ジュース?………………おれに?おまえが?」

(怪しまれてる……)



疑惑に満ちた表情を浮かべるローに平然とした顔を向けた。



「だからそーだって言ってるんだけど。いらない?」

「いる」



間入れずにコップへ手を伸ばしたローは大切なものを抱えるように持つ。
別に無くならないのにと言うことも出来なくて、一応今回は何をしているのか聞いてみることを優先した。



「何作ってんの」

「ほれ薬」

「……………………あ、もしもしローのお母さん」

「まてリーシャ。早まるな」

「電話してないから。私だってローの奇行なんか報告しちゃったら顔向け出来なくなる」



まだ小学生の子供がどうやって惚れ薬なんて作れるのか。
嘘だろうと思いながら彼の手元を覗き込むとビーカーの中にピンクの液体が入っていた。



「…………………もしもし、小学生が怪しい液体を制作してるんですけど……」

「どこに電話してるんだ」

「……………理化学研究所」

「なんで電話ばんごー知ってんだ」

「かけるフリしただけだから……私だってローが惚れ薬なんて嘘だって分かってるし。それ、そもそも匂いがお酒でしょ」



だいたい、そのビーカーはどこで手に入れたんだと聞くと父親から譲ってもらったのだと言う。
一体父親はローのどこを見て実験道具なんて渡すんだ。
きっと彼が奇行を働かないと心の底から信用しているに違いない。


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