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11


「リーシャ、今から外にでてくる」

「え?」



珍しいローの行動に目をパチパチとさせて既に後ろ姿しか見えない彼をそのまま見送る。
秋休みという一週間の休みに入ったリーシャとの家に、同じく秋休みを過ごしていたローが家に来た。
もう計算された行動としか思えない程絶妙なタイミングで窓から侵入してきたり扉から正々堂々と入ってくるローに黙って扉を開けるようになったのは不可抗力だ。
一週間が長く感じる予感は勿論当たった。
ローの両親も秋休みだというのに仕事らしい。
余程大きな病院で働いているようで、一日中帰ってこない事が多い現状。
例の如くこの家でローを預かっているが、預かる予定のない時も彼は遠慮なく家に来る。



「リーシャ」

「ん?もう帰ってきたんだ?」

「これを買いに行ってた」


「焼き芋……?」

「今トラックが止まってた」



二つあるホカホカと湯気の立つ芋は皮が黒く焦げていて、香ばしい香りが鼻を通った。
無言で差し出された焼き芋を取ろうか迷っていると更にズイッと押し付けられる。



「あつっ、わ、わかった。取るから……」



肌に直に芋が当たり熱かった。
素直に受け取らないからだと言われ苦笑しながら焼き芋の皮を剥がしていく。
黄金色の芋を二つに分割すると息を吹き掛けて冷ました。
少し目線を下げるとこちらをジッと見つめる双眼があったのでどうしたのかと尋ねると、また無言で二つに割った芋を掠め取られ代わりにローが持っていたもう一つの芋を渡された。
何をするのだと抗議すると冷ませる為に渡したからそっちを食べろと既に芋を口にしているローに言葉を詰まらせる。



「………………へー」



無愛想な事を口走る割には、その緩む口元は一体どういった所存なのだろうか。
もう考えることは止めて焼き芋を堪能する。
秋の食べ物はとても美味しかったし、たまにはいいかと黙々と食べるローを見て窓から見える落ち葉を眺めた。





朝、起きるとまたデジャヴュを感じぼやける視界に小さな身体が写る。
幾度となく繰り返される行為に慣れたリーシャは身体に巻き付く顔に向かって声を上げた。



「ロー。朝だから起きて」



もぞりと動く小学生の睡眠に付き合うと昼食すら食べ損ねかねない。
ゆるゆると上がる睫毛に起きたかと安堵すると突然手に違和感を感じた。
ローはリーシャの手を掴むとそのまま顔まで持って行き、あろうことか噛んだ。



「ちょ!何して」

「――あまがみ」

「絶対起きてるでしょっ。早く指離して!」



甘噛み(あまがみ)だからか痛くはないがムズムズとする。
気持ち悪くはないが、何とも言えない感触に指を引こうとするが寝起きとは思えない力で動かせない。



「っ……………擽ったい」



グイグイ引いていると、やっと手を離したので急いで洗面所に行って手を洗った。


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