09
担任の女性はローの母親が会えなくなった事を聞いていたようで、リーシャと話して欲しいと言われたらしい。
「せんせー、きてくれたんですね」
(!!………………恐ろしい子……)
「まぁローくん、こんにちは」
「こんには。せんせー早く上がってよ」
「うふふ、ローくんはお家でも学校とは変わらないわね」
「変わりますよ。だってせんせぇが来てくれんだもん」
「………………………どうぞ、お茶です」
無心で二人の会話を聞いてお茶を差し出した。
もう、好きにすればいい。
「親御さんが来られなくなって残念ね、ローくん。でも代わりの人がいて良かったね」
「うん。せんせー、この人はねリーシャ“おねーちゃん”」
「……初めまして、この子のお隣りに住む者です」
「おねぇちゃんは、“ぼく”によくしてくれてるとっても親切な人なんです」
「そうですか。その歳で預かっているなんて凄いですね」
「いえ」
もう、勝手に進めればいいと思う。
内心自暴自棄になりながら作り笑いを浮かべ、ローの巧みな話術を聞いていた。
(ローって……優等生に思われて、ないか。思わせてるってわけか……小悪魔って言葉で足りるかどうか……)
「あの?」
「あ、はい」
「ローくんの学校での性格は家と同じように、とても勉強が出来ていつも真面目ですよ」
「そうですか」
もう、誰の話しをしているのか分からなくなる。
「せんせー、“ぼく”のはなしはいいでしょう?恥ずかしいし……」
「そうね。ローくんは何も問題なんて起こさないから先生も逆に話さないといけないことがなくて困るわ」
担任の先生は綺麗な瞳でローを見る。
もう、発言しないほうがいいと思う。
「あ、そういえば……最近私の靴箱に人体模型の粘土が入っていて」
「“ぼく”もそれ知ってるよ。せんせぇにそんな悪いことしたやつはまだ見つからないんだよね」
「ええ……靴を見たら中にも粘土が押し込まれていて……でも、ローくんが悪戯した子を探す手伝いしてくれて助かったわ。ありがとう」
「そんな……でもだれも知らないって言うから、“ぼく”はトモダチがそんなことしないって信じてるから」
「ローくん……リーシャさんもどうかローくんを褒めてあげてくれませんか?」
もう、聞かないでください。
「………………………エライネ」
ローの頭を完璧な作り笑いと棒読みの言葉と共に撫でる。
彼は頬を朱く染め触れた頭を手で確かめるように触った。
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