08
「家庭訪問……?え、聞いてないんですけど」
「言ってねーから」
「……………何時から」
「二時」
土曜日にローが突然家にきて開口一番に発したのが「今日はおまえの家に客がくる」だった。
幻聴のままで終わって欲しかった内容は学校の担任がリーシャの家に来るということ。
そんなことローの母親からも聞いていない。
「だから今おれが伝えにきた」
「私ローの親じゃないのに」
「それはおれにもふつごうだからないな」
「…………………とにかく、私はそーいう親の代わりの話なんて聞けない」
ローの怪しい発言をスルーして言い切れば彼は母親が急患が来てしまい帰れなくなったから変更するのは無理だと言われた。
急患が来た時は前もって母親から連絡なりして欲しい。
「はぁ……………わかった。先生は家の住所知ってんの?」
「となりって言っといた」
「そ……………お茶と客間の用意しなきゃ…………ローはどうすんの」
「おれも同席する」
「?…………なんで?」
疑問を投げかければ、今の家庭訪問は三者面談なのだと説明され驚いた。
リーシャの家庭訪問のイメージは親と先生が話す学校や自分の事をこっそり聞くことだ。
決して疚(やま)しいことをしているわけではないのに心臓がドキドキしたのを覚えている。
あと三十分もあるので適当に客間と玄関を掃除した。
「なんで誰かくると皆そーじするんだ」
「綺麗な家ってイメージが大切だし、まぁ……そんなもん」
「そんなもんか」
ローが聞いてきたのに納得するのが早かった。
なんとなく聞いただけなのかと内心考えるとお茶の用意をする。
「先生はお茶好き?」
「さぁ、きょうみねぇ」
「ローの興味は聞いてない。先生の好みが知りたいんだって」
「……お茶はばんこくきょーつうだからもんだいないだろ」
「万国共通って……………どうにかなるか……」
ローの事を聞くだけだし、後は成り行きに任せるしかない。
お茶の種類は緑茶で、冷たいものを出すことにした。
それから二時を十五分過ぎた時、家のインターホンが鳴って若い女性が室内モニターに映る。
ローがこの人だと頷いたので玄関に向かって外へ出ると笑顔で挨拶され、こちらも頭を軽く下げて上がってもらった。
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