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 01

潮時、と感じた。



「じゃーな」

「うん。元気でね」



あっさりとした別れ。
これで良いのだと何回自分に言い聞かせたのかわからない。
最初は些細な細かい亀裂が生じて次はその亀裂が徐々に広がっていった。
最後にはすれ違いが原因だと気付いたが既に手遅れ。
別れを切り出したのはどちらともなく、ではなくてリーシャからだ。
ローは一言たりとも別れたいと零したことはなかったが最後に溜息をついてわかったと別れることを認めた事が何よりも実感した。
これでローともおさらば。
歴史で言うなれば別れたのは今から三年程前。
リーシャは歳も過ぎて居酒屋で働いていた。
別れを経験したのもあれっきりで今は彼氏も誰かを好きにはなれない人生だ。
時々、頭に浮かぶのはどうしてもローだけ。
シャボンディ諸島で働いていればいつか会えるだろうかと期待している自分を毎日嘲笑う。
虫が良すぎて笑えない。
大体マンネリで別れたのにまた繰り返すに決まっている。



「リーシャちゃーん」

「はーい!」



店長に呼ばれると紙切れを渡され買い物を頼まれたので裏口から出た。
プクプクとマングローブの根元から樹液が浮く。
歩きながら眺めているといきなり前方に黒い影が飛び上がったので反射的に見上げると黄色の髪色がふわふわと靡き反対側には大きな人間が対峙していたので立ち止まる。
よそ見をしていたので騒動が耳に入らなかった能天気な自分を叱り付け何とか近くの木に避難した。
そこまで走ると微かに視線を感じ顔を左右に動かす。
目が合った人物は一人で、その男を見納めた途端に息をするのを忘れた。
見られていることに耐えられなくなり逃げるように裏道に入る。
リーシャの勤める店は無法地帯ではないのでトラブルとは無縁に近かった。
油断した結果が招いた導きは自分が望んでいた事だと言うのに目を背けてしまったのだ。



「ロー……着いたんだ」



男は明らかにトラファルガー・ローだった。
昔とは違い周りに仲間も居て如何にも海賊をしていたので納得する。
彼は人を引き付ける人間だからきっと船員達はローを慕っているのだろう。
故郷からいなくなったのはリーシャなのに自惚れた感情を持つ事に嫌悪。
早く買い物を済ませてしまおうと歩き出した。

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