▼ めでたしめでたし、ってね
あぁ、最悪だ。
私はヒュッと意識が遠くなりぼんやりとしか考えられない頭でその言葉を繰り返す。
思ってみれば、今日は何かと悪いことがありすぎたのだ。
珍しく早起きし、学校に着いたと思って喜んだはいいが朝から元気なお花係の人にホースの水を事故でかけられ(冬なのに)、その後は必死に謝られたから笑いながら大丈夫、と体操服に着替えた。
そしてその後は授業中に寝ていた私の一つ前の席の生徒に先生がチョークを投げつけたはいいが、コントロールができていなく私の額に直撃し危うく気絶寸前で、皆に笑われた。
そして悪運の最後が今現在である。
先生に頼まれてプリントを制作し、もう夕日が落ちかける前にやっと終わり誰もいない教室に鞄を取りに行き、さぁ出ようかと机から一歩踏み出したところで最近安定していた過呼吸の発作が起きるという絶体絶命の危機。
誰もいない教室に一人、もう放課後が過ぎていて廊下には人の気配は一切ない。
私もここまでか、と苦しさに滲む涙の生温さを感じながらゆっくりと目を閉じる。
「おい、目ェ開けろ」
全く音が聞こえなかったのに私の耳には予想を超える声。
ぱちりと今だ過呼吸を起こしている顔を少しずらせば、涙で見えないが学ランがぼんやりと歪んで見えた。
「……ひ、だ……」
「袋は……ねェか」
私を見下ろす男の子だろう人はそう呟けばしゃがみ込むのが見えた。
私は仰向けのままそれを目で追えば、次には唇に少しかさついた感触と呼吸を感じ、驚きに固まった。
それから数分程それは続き私は徐々に空気を吸えるようになる。
「……助けて、くれたの?」
「……袋がなかったからな」
視界がクリアになりその人物があの有名な(いい意味でも悪い意味でも)トラファルガー・ローだと知り、彼にその数日後に「好きだ。助けたんだから当然付き合ってくれるよな?」と電撃告白されることに私は――。
ある意味悪運がいいのかもしれない(そういえばなんであんな時間に学校にいたの?)
(……本読んでたからだ)
(熱心なんだねー)
((お前が気になって帰らなかった、なんて言えるかよ))
Title/ルネの青に溺れる鳥
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