▼ ここからが本番
−−ギィ
錆びた鉄の扉を開ければそこはフェンスで囲まれた学校の屋上。
「やっぱりか」
私がここへ来たのはただ席が隣というだけのトラファルガー・ローという不良くんを探してきてくれという先生の御達示があったからだ。
まぁ私は別にローとは仲が悪いとかではない為、こうして探して見つけ出しているわけだが。
「珍しい……」
本日もう何回目かわからない彼の屋上での姿に目を少ししばたかせる。
「寝顔かわいいや……」
まるで幼い子供のように身を縮こませて目を閉じているローに心が密かに悶えた。
私は実はローの事が好きなのだが、彼は見た目通り学校で有名な『女遊び』をしている男なのである。
「隈酷くなってる……」
やはり昨日も遊んでいたのかいつもより濃くなっている目の下。
私はそっとそこへ指を滑らせる。
−−ガシ
「………!?」
しかしそこへ触れる前によく知る刺青だからけの手によって止められた。
「起きた?」
「前から起きてた」
確かにローはとても寝起きとは思えない程ぱちりと目が開いていた。
「じゃあ早く教室に−−きゃっ!」
言い終わる前に引っ張られ視界が回転して空とローだけになった。
「ロ、ロー……?」
突然の事に気が動転するがローはニヤリと笑っていた。
「なァリーシャ」
「な、何?」
ローは私の顔にかかった髪をゆっくり退かす。
そんな彼の行動に心臓がばくばくと波打つ。
「さっき俺の寝顔可愛いって言ったよな?」
「え、うん……言ったけど……って、は、早くどいてよロー!」
呑気に質問なんかに答えている場合ではなかった。
私は抜け出そうと身をよじるがローが私の両腕を頭上に束縛したことによりできなかった。
「男の寝顔に可愛いなんて言っちゃいけねェなァ、リーシャチャン?」
「そう、ね……悪かったからっ、離して……!」
からかうように言う彼に危機を感じ私は口早に謝る。
「クク……今更遅ェよ」
「え」
ローは私の耳元に顔を近づけてきて−−。
「お仕置きだ」
「……な!」
頭か理解する前にローの手が制服の中に侵入してきた。
「っ、ロー止めて!」
必死に抵抗するがいとも簡単に組しかられる体。
「あっ」
「柔らけェな」
スス、と手が腰の辺りを行き来する。
こしょばゆい感覚とが脳に響く。
「やぁっ」
「満更でもねェだろ?」
「違う……!」
ローと体だけの関係になるなんてまっぴらごめんだ。
もしこのまま行為を許してしまえば−−。
「っ、いい加減にして!」
力の限り叫べばピタリと止まる手。
そのまま体から手の感触がなくなりふらりと離れたロー。
「………違ェんだ」
「何が、違うの?」
座り込んだ彼がぽつりと零した言葉。
「お前が、欲しかった」
「……え?」
突拍子もない予想外の言葉に私は冷静になりかけていた心臓が聞こえそうな程高鳴った。
「ずっと……この学校に来た時から、お前が好きだった」
「……ロー」
先程とは全く雰囲気が違い力なく俯く彼に私は切なさと愛おしさを感じた。
襲われたというのに変な話しだ。
「ロー、私はね」
ローがゆっくりと私を見る。
「もう私はローに捕まってるよ?」
眉を下げながら言えばいきなりローがバッと私に抱き着いてきた。
「嘘じゃねェよな?」
「うん」
「俺のもんになれリーシャ」
「うんっ」
私が涙を浮かべながら頷けばローが私の唇を噛み付くように奪った。
ほらね、私はとっくに貴方に捕まっていたんだから(んん……もう駄目っ)
(我慢しろ)
(さっきのヘタレはどこいったの!?)
(どこかに置き忘れちまった)
(……確信犯め)
(やったもんがちだぜ?)
Title/あるすとろめりあ
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