なにも知らないしあわせよ
モコモコな帽子。
実は少し大きかった。
でもそれをあいつに言うことはしなかった。
「仕方ない……」
箱に入っている帽子を見ながら俺はそっと取り出す。
早くこれを見せてリーシャの喜ぶ顔が見たい。
なんて思う俺はすでにあいつを――。
「大切か……」
自分の言葉に苦笑いする。
人間という生き物について、俺は余程の事がない限り興味や好感を持たない。
(それか気まぐれだな)
でもリーシャはローが知っている人間と違った。
ローの夢を笑わないでいてくれた。
他にも色々とあるが、それだけで十分だった。
自分はいつかの未来に必ず海賊船を持って、船長として仲間を集めたい。
その未来のローの隣にはもちろんリーシャが。
どんなことがあっても彼女を守り抜く覚悟はすでにある。
だから俺は強くなる。
ローは内なる決意をし、リーシャとローが寝る寝室へと向かう。
部屋についてリーシャの眠っているベッドにそっと近寄る。
「ありがとな」
あの時言えなかった言葉。
まさか誕生日を親父以外の人に祝われるなど、今までは考えられなかった。
だから俺は、思っていたより嬉しかった。
プレゼントを貰った時も自分ではありえないくらい浮かれた。
いつかあの帽子に合うピアスや服を選ぼう。
そう遠くない未来の自分を想像し、口元が上がるのを感じた。
Title/たとえば僕が
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