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「アリシアちゃんの誕生日今日だけど、行かないの?」



先日、壮大にアピールしていたアリシアの誕生日が今日行われる事を伝えるとリーシャの言葉にローは読んでいた本から目を話した。
ちなみに今読んでいる本のタイトルは『大人の医学』というものである。



「どうして俺がわざわざあいつのことを祝わないといけねェんだ……」

「友達でしょ?」

「誰がだ。どうみても友達にはなれねェよ」

「じゃあ行かないの?」

「リーシャが行きたかったら行けばいい」

「私だけかぁ……」



彼の反応をちらりと見ながら意味ありげな視線を向けるリーシャとローの目がバッチリ合った。



「……行かないからな」

「私、アリシアちゃんにはあんまりよく思われてないんだけど……」



少し寂しげな目を向ければローはバツが悪そうに視線を反らしたができるなら付いてきてほしいとそう願いを込めてジッと数秒見つめた。



「……渡すだけか?」

「うん。渡すだけ」



諦めた声を出すときのローは降参したときの合図だ。



「条件を呑むなら行ってやらないこともない」

「うんうん。ならお願い」




条件をまだ聞いてないのに間を開けずに頼むリーシャに彼はニヤッと妖しく笑う。



「いいのか?簡単に頷いて」

「え?」

「条件は安易なもんじゃねェぞ」

「っ――。ロ、ローくん……近いよ……」



じりじりとリーシャとの距離の間合いを詰めてくる。
壁に追い込まれ、リーシャは息を呑む。
ローの「男」の部分を垣間見たような気がする。
後ずさる行為すらできない状況で視線をウロウロとさ迷わせた。



「こっち見ろよ」

「な、なんか今日のローくん、変……」

「ククッ、変ってなんだよ」



楽しげに笑う声にそろりとローの顔を仰ぎ見る。
からかうような目には熱も感じ前にも少しこんなことがあったような覚えがある。
今でもなぜか自然とローがいつの間にかリーシャのベッドにいるだとか眠りに落ちる前に彼からそんな灯のような視線を受けた。



「からかってないで、早く行こ」

「からかう……か」



気が早まった彼の行動のいつもの雰囲気に戻そうと声をかけると、どこか遠くを見るように自嘲じみた声音が耳に残った。






結局、アリシアの誕生日に二人で行きプレゼントを渡した後日談。













今日は年に一回行われるノースブルー伝統の祭が行われる日。



「服は……う〜ん……」



悩ましげな声を上げるリーシャに音もなく忍び寄る影があった。



「今日のドレスか?」

「えっ!?」



気配すら感じなかったローの声にリーシャは飛び上がる。
それを見て意地悪く笑みを浮かべるのは、きっと確信犯だからだろう。
ひとしきりローがリーシャの手元にある黄色のドレスを見ると彼女を見た。




「それ毎年同じだな」

「ドレスは高いから……私はこれで十分」



ローは呆れた表情をする。
あらかた、欲がないと思っているに違いない。



「ちょっと来い」

「え、な、ローくん?」



突然手首を掴まれ外套を羽織るローにリーシャもふかふかな羽毛の服を渡された。
外に出るらしく彼に手を引かれるままに町へ連れてこられた。



(なんだろ……)



スタスタと前を歩くローが突然一つの店の前に止まったので上を見上げると看板に『ジェリーショップ』と表記が。



「待ってろ」



短く伝えると彼はリーシャを置いたまま店へと入っていくので言われた通り待つこと数分。
何かを抱えて店から出てきたロー。



「それ何?」

「後でわかる」

「??」



意味深な言葉にただ困惑するだけのリーシャに彼は手を再び引っ張り歩き出した。
次に着いたのは『ドレス』と名前が施された建物。



「ドレス、って……」

「入るぞ」



今度はリーシャも入るようで、意見を言う前に手を引かれた。
店内へと入ると、そこはまるで別世界のようで様々な宝石や装飾で飾られたきらびやかなドレス達が視界をくぎ付けにした。



「素敵……」



熱に浮されたかのように呟いてしまい、それを見ていたローの視線などに全く気付かない程に見つめる。



「好きなの選べ」

「え?私、お金持ってきてないし、高いよ……!」

「自腹にしろなんて言ってねェよ。それにお金は親父持ちだ」

「余計に無理だよ……」



強情なリーシャに彼はため息をつくと近くにいた店員を呼ぶ。
その店員の女性はローに呼ばれると顔を赤く染めて、控え目に歩いてきた。



「こいつを試着させてくれ」

「かしこまりました」



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