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時は流れ、
三年後――。
リーシャは十六。
ローも十五になった。
「なんか、ごめんね」
「全くだ」
容赦ない言葉を漏らすのは、三年前と比べて背が伸びたロー。
リーシャは申し訳なさげに昔より長くなった薄緑色の髪を揺らす。
数分前、足に少し怪我をしてローに背負われていた。
「まさかこけるなんて思わなかった……」
「それはこっちの台詞だ」
リーシャの失態に呆れながらもこうして運んでくれるローにふっと笑みが零れる。
「なに笑ってんだ……」
「ふふ、わかった?」
「肩が震えてんだよ」
拗ねたように呟く年頃の男の子にリーシャはまた笑う。
十五歳という本来難しい年頃になっても今だに一緒にいてくれるローはリーシャにとって嬉しさ以外にはない。
「親父に見てもらうからな」
「うん」
出会った頃よりも勇ましく、逞しくなったロー。
昔は口数が少なかったが今は少しだけ話すようになり父親であるジェイドの下、医者としての勉強も頑張っている。
(大きくなったなぁ)
数年前は頭を撫でたりしたが、今は逆に背負われる身となった。
時間という年月はあっという間だ。
「ローくん成長したね」
「くんは付けるなって言っただろ」
「でも私はローくんがいい」
何故かローは最近、子供扱いされるのを嫌がり反抗期の一種なのかと思ったがジェイドに聞いたところ違うらしい。
一定の歩幅で歩くうちにリーシャとローの住むトラファルガー宅に着いた。
「おやおや、どうしたんだい?」
六年間、変わらない笑みを浮かべるジェイドが二人を出迎えた。
何事かと出てきたようだが、特に驚いた様子はない。
流石大人だと内心、感心しながらジェイドに経緯を述べる。
「なるほど、リーシャちゃんらしいね」
ジェイドは微笑みながらリーシャの足の傷を見るとローを見た。
「ロー。リーシャちゃんの手当をしてあげなさい」
「わかった」
彼はリーシャを下ろすと椅子に座らせ近くにあった道具箱を取ると、中から治療道具を取り出すローの動作にジェイドは温かく見守っている。
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