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そんな対決する二人を見て微笑むのはリーシャとジェイド。
傍から見れば、楽しそうである。
アリシアは、またこの状況に何か思案していた。
お節料理を綺麗に平らげてくれた四人にリーシャは嬉しく思いながら片付けをしていた。
「おいしかったよ、リーシャちゃん」
「ありがとうございます。私もすごく楽しかったです」
「私もだよ。あんなに大勢で食べたのは久しぶりだった」
本当に楽しそうに笑うジェイドにリーシャもふっと笑う。
いつもは三人か二人で食べる時間はとても有意義であった。
「そうですね」
人は何故か暖かさを求め、リーシャもずっと欲しかったものが、今は手の中にあって。
「そういえば、ローくんは?」
「ローなら疲れたと言って早めに二階へ上がっていったようだ」
「ふふ、ローくんもなんだかんだ言って楽しそうでしたもんね」
「そうだね。私も喜ばしいよ」
親の表情で笑うジェイドに少し羨ましく思った。
父親として我が子を見守る目はリーシャにとっても微笑ましい。
「さて、夕飯の片付けは私がしておくからリーシャちゃんも寝ておいで」
「わかりました。お休みなさい」
「お休み。良い夢を」
階段を上がり寝室へ向かう。
二人部屋となっている子供部屋は月明かりに照らされているくらいで、薄暗かった。
「寝てる……」
彼の寝顔を覗き込むと小声で呟いた。
スヤスヤとあどけない顔で寝息を立てている。
(可愛いなぁ)
リーシャはこの世界に来てローと出会った。
恩人である子供。
リーシャを受け入れてくれたトラファルガー家。
記憶喪失の少女を、何も持たない自分を家族と言ってくれたジェイド。
(言わなくていいって言ってくれたけど……)
ジェイドは本当のことを言わなくてもいいとリーシャに言ってくれた。
このままで良いのか、とつい甘えてしまっている。
ローの頭をさらりと撫でると自分のベッドへ入った。
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