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なんといっても、ローの周りに友達ができるからである。
彼の気持ちを丸々無視したように見えるが、実際は違いリーシャの天然なのか、悪気のない行動に彼はため息と本音を飲み込んで仕方なくアリシアとテッドを家に入れている。
そんな彼ではあるが、少なからずまぁいいか、と思っている節がある為、完璧に拒絶はしていない。
つまり、少しは許している部分があるのだろう。
「ローくん、テッドくんだったよ」
「はぁ……またか」
アリシアを腕に纏わり付かせながらローは苦々しいため息をつく。
それにテッドはもちろん噛み付いた。
「俺が来たら一々顔しかめんじゃねーよ!」
「嫌がっている証拠だ」
「ロー様、誰ですの?」
テッドが反論しようとした時、アリシアがキョトンとした表情で聞いてきた。
その問いにテッドは初めて少女の姿を目に写す。
「トラファルガー。誰だその女?」
「まぁ!女だなんて、下品ですわ!貴方こそ誰なんですのっ!?」
テッドの物言いにアリシアは癇癪を起こす。
テッドはテッドでアリシアと気迫に押されっぱなしである。
いくらガキ大将でも貴族の娘のオーラにはたじたじだ。
「いきなりなんだよ……」
「煩いですわ!名前を名乗りなさい!」
「テッドくん。ちょうど自己紹介するには都合がいいんじゃない?」
こんな空間でさえのほほんとするリーシャにローは一種の才能を感じた。
「くくっ、確かにな。自己紹介しろよ」
早くやれと言わんばかりの彼の態度にテッドは唇を噛む。
ガキ大将のプライドと貴族の娘のプライド。
どちらが勝つのだろう。
ローはかなり楽しんでいた。
リーシャは温かい眼差しで見守る。
「私を誰だと思って!?」
「お前こそ俺を誰だか知ってんのか!?」
ある意味、似ている二人は自信を持っている者同士である。
ローとリーシャはなかなかお似合いではないかと思った。
「仲がいいね」
「そうか?まぁ、そうかもな」
このまま言い争いをしていて欲しいと切実に願うローだった。
それから今日初めて顔を合わせた二人の喧嘩は程なくして終わり、その頃にはジェイドも帰宅していた。
ちょうどいいとテッドとアリシアも夕飯に誘う。
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