06
「オムライスか」
「ふふっ……自信作だよ」
彼にからかわれた後、一番作りやすいオムライスを作った。
作る時の手際の良さにローは最初、目を見開きながら見ていた。
「記憶喪失なのによく作れたな」
「うん。結構体は覚えているものだよ?」
リーシャは不自然じゃないように、あらかじめ回答を考えていたおかげでローは得に気にすることなくオムライスを口に入れる。
「どう?」
「悪くねェ」
「素直じゃないなぁ……」
ローの返事に笑いながら自分も、オムライスに手をつけた。
***
オムライスを食べ終えたリーシャ達はそれぞれの時間を過ごしていた。
―ペラ
自身には到底理解できないような分厚い医学書を読んでいた。
「ふぁ」
リーシャはというと、ローの隣でウトウトしながら彼の姿を見ていた。
「眠いのか?」
「少しね」
そう言うと、ローは何を思ったのか、読んでいた医学書をパタリと閉じた。
「どうしたの?―わっ!」
突然立ち上ったと思ったら、私の背中と足の裏に手を入れて俗にいうお姫様抱っこをされた。
「えぇ!?ローくん、自分で歩けるよ!」
リーシャはローの腕から逃れようとしたが、余計に抱かれる力が強くなった。
「大人しく抱かれとけ」
「っっ!」
その言葉の意味が違うとわかっていてもローの不適な笑みを見てしまったこちらは、なんだか生々しく感じた。
「なんだ?変なことでも想像したか?」
相変わらずニヤニヤした顔でそんな事を言うものだから、余計に真っ赤になった。
「ななな、何言ってるの!ち、違うに決まってるでしょっ!」
叫ぶと同居人ははいはい、と適当に相槌を打った。
ローくんの将来がとてつもなく不安になった。
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