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「今ね、テッドくんと話をしてたんだよ」
「テッドと?」
意気揚々と語れば、ローは怪訝な表情でテッドを見た。
その視線に彼はギクリと肩を震わせる。
「お前が普通に話せるなんて初耳だなぁ?」
「っ!馬鹿にしてんのか、てめぇ!」
「別に。リーシャ、帰るぞ」
「そうだね。夕飯作らなきゃ」
怒るテッドを軽く流し、リーシャに声を掛けるローに気がつき椅子から立ち上がる。
「テッドくん、お茶ご馳走さま」
「あ、いやっ……」
お礼など言われ慣れていないのだろう。
テッドはあたふたしながらリーシャを見る。
そんな二人を見て当然、ローは面白く思わないわけで。
「腰抜けテッドは早く寝ろよ」
「はぁっ!?ふざけんな!」
「駄目だよローくん、仲良くしなきゃ」
「ふん。お断りだな」
テッドが何か言う前にローはリーシャの腕を取り外へ出た。
「ローくん……せっかく親友になれるチャンスだったのに……」
未練がましくテッドの家を振り返るリーシャにローはため息をつく。
「あいつと親友なんて、世界が終わってもありえないな」
「そんなことないよ」
「ある」
まさに犬猿の仲とはこのことなのか。
ローとテッドが仲良くなる日は遠そうだ。
「今日の夕飯何がいい?」
「……グラタン」
「わかった。頑張って作るね」
ローが意外とグラタンをリクエストすることに内心微笑む。
グラタンと一緒くたにと言わず、今までもリクエストがある度にリーシャは様々なグラタンを作ってきた。
ここまで来るとローの好物はグラタンであるとわかってしまう。
好物を公言しない代わりに一番食べたいと言う。
ちなみにジェイドの好物はチョコレート。
こっちも意外で、度々リーシャが何か手伝うとジェイドが白衣のポケットからキャンディの形をした包みを渡されるのだ。
ローには「白衣の中にチョコとか変わってるよな」と飽きられながらも仕方がないと見て見ぬフリをされているがジェイドは医者であり本来甘いものを進めるべきではない人間なのだがそこは内緒で、とジェイドにのほほんと言われている。
そんなことを言われれば、じゃあと苦笑いをすることになった。
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