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「いい天気……」
久々に太陽を見たリーシャは顔に手をかざして上を見上げる。
テカテカと眩しい光は布団を干すのに最適だ。
「おい」
「え?」
聞き覚えのない声に振り向く。
そこには、若い男性が立っていてリーシャにニヤリと笑みを浮かべていた。
「お前、ここに住んでるのか?」
「知らない人には個人情報を教えるわけにはいきません」
なんとなくローと面影が似ている男に冷たく接する。
リーシャの態度に男はククッと喉で笑った。
「なるほどな。確かに失礼だった」
「どなたですか?」
「……ロイド。お前は?」
名前の空白を疑問に感じたが、とりあえずは名乗ってきたのでリーシャは警戒しながら自己紹介をする。
「リーシャ、です。ロイドさんは町の人ですか?」
「違う。船で来た」
「ジェイドさんに用ですか……」
「あァ、ジェイドさん……か。いるのか?」
「はい……」
懐かしむような表情を見せたロイドに首を傾げる。
家を見る顔は、慈愛に満ちているようだった。
とにかく、彼が何か悪さを働くようには見えなかった、ということだ。
「あ、けど今は出掛けてます」
「そうか、なら」
ジェイドの居場所を思い出し、告げると彼はリーシャを見た。
「しばらく話し相手になってくれねェか?」
「え?構いませんけど……」
一人ではなんとなく不安で、寝ているローを起こそうかと考える。
そんなリーシャの考えを見通したかのように男は笑った。
「別に取って喰おうなんて思っちゃいねェよ」
「………」
どう反応すればいいのかわからず、眉を下げる。
そんなリーシャに対して彼はククッと喉を震わせた。
改めて彼を観察してみれば、目には隈があり耳にはシンプルなピアスが両耳に二つずつ。
藍色の髪色で目も同色だった。
よくよく見てみれば、腕から指にかけて刺青がしてありリーシャはギョッとした。
(入れ墨!?)
初めて見るものにロイドから一歩後退る。
恐ろしいと途端に感じた。
「どうした?」
リーシャの怯えた表情を不思議そうに見据えるロイド。
「あ、の……海軍呼びますよ……」
「いきなりなんだ」
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