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「うるさい、何の用だテッド」
ローがテッドと呼んだ男の子はフン、と鼻で笑った。
「お前を最近見なかったから挨拶しにきてやったんだよ」
テッドの後ろには三人の男の子もいてケラケラと馬鹿にするように笑った。
これは所謂ガキ大将と言われる存在なのだろうか。
リーシャの世界にはいなかったから珍しい、と思う。
「それはご苦労だな。行くぞ」
興味なさげにテッド達を見ると、ローはリーシャに声を掛けた。
それに対してリーシャはうん、と頷くとローに続いて歩き出す。
すると、またもやロー達をテッドが呼び止める。
「忙しいと言ったのが聞こえなかったか」
「うるせぇっ!医者の息子だからって偉そうにすんなよ!」
「関係ねぇだろ……」
全く関係のないことを持ち出すテッドにローは呆れたように呟く。
リーシャはローとテッドの関係を疑問に感じていた。
ローの性格からしても、テッドとの関わりは無縁に思った。
人や物事に首を突っ込むことをあまりしないからだ。
「と、とにかく、逃げんじゃねぇよ。腰抜けが」
「前に怖くて腰を抜かしたお前に言われてもなんとも思わない」
ズバッと言葉の刃でテッドの精神心理を貫いたロー。
テッドはフラッと眩暈を起こしたように数歩よろめく。
一体二人の間に何があったのだろうと気になるリーシャ。
ローはフン、と勝ち誇った笑みをテッド達に向ける。
先程の仕返しなのだろう。
リーシャは傍観しながら交互にローとテッド達を見た。
「くぅっ、よくも……言ってくれたなぁ」
三人の男の子に身体を支えられたままテッドはローを睨む。
そして、次はリーシャにその目は向けられた。
「お前が……女連れとは珍しいな」
「別に」
素っ気なく返すローにテッドはリーシャを見ながらニヤッと笑う。
「お前の彼女か?」
「お前みたいな腰抜けには関係ない」
ローが皮肉るとテッドの表情は苦く歪んだ。
リーシャはそれをただ見ている。
なぜかというと、男の子同士の戦いにリーシャが入っていっては駄目なような気がしたからである。
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