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隣の島に海賊が来たと誰かが伝えに来たのは、昼ご飯を食べている時だった。
ローとジェイドは気にする様子はなかったが、リーシャは心配でご飯があまり喉を通らない。



「海賊って、大丈夫なんですか?」



恐る恐るジェイドに尋ねるリーシャにふわりと彼は笑う。



「もしもの時はちゃんと考えてあるから大丈夫だよ」

「穴を掘ってあるからな」


「穴?」



聞けば、なんでも地下に隠し部屋を作っているそうで。
準備が万端なトラファルガー家に感心。
海賊対策に抜かりがないことはリーシャにとっても安心だ。



「広く作ってあるし、食料も溢れるぐらいある」

「凄いですね……」



呆気に取られるリーシャにローが答える。



「いつ海賊が襲ってくるかわかんねェ世の中だからな」

「海賊だけじゃない。盗賊や山賊も危険だから、これくらいしなければね」



ジェイドがリーシャに笑って言う。
確かにこの世界はリーシャのいた世界とは違い、危険が多く付く。
いつ死ぬかわからない。
そんな中で、ローやジェイドを含めた民間人達は一生懸命生きているのだ。



「………」



リーシャは本の中だとしか思わなかった。
生きているようで存在しない。
けれど、今だって二人は動いて喋っている。



(私も、生きてる)



改めて、いつ元の世界に戻れるかと待っていても可能性はあまり期待できない。
だから、今のこの時間で生きていくことになる。
この先、何が起こっても覚悟を決めることをしなければいけないのかもしれない。
リーシャは釈然とそう思った。










ノースブルーでは珍しく、雪が少ない日だった。
だからといって、防寒具を忘れては大事だ。
ローと二人でジェイドに頼まれた薬品を買いに行った帰りに事件は起こった。



「おい、ロー!」



叫び声にリーシャとローが横を見遣れば、ドンと仁王立ちする、体が大きな男の子がいた。
見るからに意地が悪い表情をしている。



「知り合い?」

「知らない」

「てめぇ!嘘抜かすんじゃねぇぞ!」



ローの言葉に不機嫌に返す男の子。
ローは面倒臭い、という表情をしていた。



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