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さすがのリーシャも苦笑いしかできない。
そんな時、ローの低い声が響いた。
「お前の誕生日なんかに俺は絶対行きたくなんかなかったんだよ。リーシャも行くから来たんだ。調子に乗るな」
「ローくん……」
「っ……!」
庇うように睨むローにアリシアはビクッと傷付いた表情をする。
そんなアリシアに彼は構うつもりはないらしく、今しがた通った玄関にリーシャの手を掴み戻ろうとした。
「ま、待ってロー様!」
アリシアは後を追うように声を上げた。
リーシャはアリシアを見るがローは相手にしない。
(このままじゃ、駄目だよね……)
修羅場にするには酷な特別な日。
リーシャはローの手を少し引っ張り、「待って」と声を掛ける。
すると、幼なじみは怪訝な表情でリーシャを見た。
だいたいの、今の彼の気持ちはわかる。
要するに構うな、だ。
その表情を見てもリーシャはローの服をクイッと引っ張る。
ここで諦めるわけにはいかない。
せっかく来たのに、帰ることなんてできないのだ。
「私なら大丈夫。だから、ローくん……お願い」
ジッとローを見詰め、彼もリーシャを見る。
そして、先に折れたのは――ローだった。
「少しだけだからな……」
「うん」
「……はァ」
ため息と共にローは向きをアリシアの方に向ける。
アリシアは不安な表情で少年を見ていた。
「ローさ、ま……あの」
バツが悪いような顔でオロオロとするアリシア。
先程の彼の態度に後ろめたさを感じているのだろう。
アリシアを見たローはリーシャに向けた表情を見せた。
「次はないと思え」
「は……はいっ!」
ローの言葉の意味を悟ったアリシアは表情をパァッ、と明るくさせた。
二人の空気が和らいだことに、とりあえずは一安心したリーシャだった。
アリシアに案内され向かったのは、シャンデリアが煌めく部屋。
既に数人程先客がいた。
年齢はリーシャ達と差ほど変わらないような子供達。
中にはちらほらと見覚えのある顔もあった。
「ローくんだぁ!」
「あ、本当!」
「リーシャちゃんもいるよ!」
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